2010年12月13日月曜日

この国の将来に希望を抱かせる学生たち

昨日「ISFJ(日本政策学生会議)政策フォーラム2010」の介護分科会にゲストとして招かれ 慶応義塾大学日吉キャンパスに行ってきました。
「ISFJ(日本政策学生会議)」というのは 学生の提言で未来を創ることをめざして1994年に設立された非営利の政策シンクタンクです。
毎年12月に 政策担当者を招いて「政策フォーラム」を開催し 参加学生が半年かけて作成した政策提言論文の発表および政策提言の場を提供しています。
昨年は 全国26大学57研究室が研究発表を行い 527名ものの学生参加しています。
今年度創設された介護分科会では
・慶應義塾大学 樋口美雄研究会「介護サービス供給不足解決に向けて」
・日本大学 宮里尚三研究会「介護福祉士に関する研究」
・日本大学 豊福建太研究会「介護保険財政の地域格差是正に向けた政策提言」
・関西大学 林宏昭研究会「介護事業の持続的発展を目指して」
・立教大学 高原明生研究会 国際分科会「介護分野における外国人労働者の受け入れ」
の研究発表が行われました。
これらの発表を聞いて講評し評価することを依頼されました。
テーマのほとんどは「介護人材不足対策」に関するものでした。
評価を云々するまえに 学生たちが「介護に興味を持って研究し政策提言を行う」という事実自体が すばらしいことだと感じさせてくれました。
こういう若者たちが どんどん多くなってくれれば「介護や社会保障 さらにはこの国のあり方を 既成概念にとらわれず議論し その実現に向けたアクションがはじまる」という期待を抱かせます。

2010年12月9日木曜日

これが「政治主導」なのか!?

主要各紙がこぞって報道しているように 昨日の民主党の作業部会で 介護保険制度改革の「提言案」が示されました。
これによると
①高齢者が在宅サービスを受けるときに必要な介護計画の作成費を無料から有料に切り替える
②介護の必要が少ない高齢者の利用者負担を1割から2割に引き上げる
という社会保障審議会介護保険部会の意見書に反対し「行わない」と言明しています。
反対論者ならば「もろ手を挙げて賛成」といいたいところですが 本当にそれでいいのでしょうか。
一方 同日「社会保障改革に関する有識者検討会」(座長:宮本太郎北海道大学大学院法学研究科教授)は「政府・与党社会保障改革検討本部」(本部長:菅直人首相)に提出する報告書を取りまとめました。
この日取りまとめた報告書は「非公開」でした。
会合後の記者会見で事務局は 財源について「消費税を基幹的な役割を担うものとして重視した」と述べています。
介護保険部会での議論は「民主党」政府が閣議決定した「pay as you go原則」と「消費税を上げない」という「民主党」のマニフェストに束縛されて 前述の2点のような方向性を打ち出したはずです。
ところが「民主党」自体が この結論を否定したのです。
「政治決断」だといってしまえばそれまでですが では この間の議論は一体なんだったのでしょうか。

2010年12月8日水曜日

明日は介護保険法の誕生日

13年前の明日12月9日は 介護保険法が成立した日です。
2000年4月の法施行時の総理大臣が小渕恵三氏だったことなど 多くのみなさんは もうお忘れのことでしょう。
この10年間の制度の歩みを総括する書籍の発行やシンポジウムの開催はさかんですが 明日につながる前向きな議論はこれからが正念場です。
しかし 内閣府の「障がい者制度改革推進会議」中でも 先の社会保障審議会介護保険部会の取りまとめや12月3日の改正障害者自立支援法の成立について 委員から批判が相次いでいます。
介護保険部会の意見書に「介護保険の被保険者範囲として若年障害者への言及」があることに対し「統合も選択肢にあるのか」という委員の質問に対する厚生労働省の担当者の回答は「現行の介護保険との統合を前提にするスタンスにない」というものでした。
「介護の普遍化」や「社会化」といった介護保険の崇高な理念は いったいどこへ行ってしまったのでしょうか。
政も官も そして民も 自らの目先の利益や既得権の保守に汲々としているようでは この国に明るい未来など見えてくるはずはありません。

2010年11月22日月曜日

「暴論」を吐かないのがプロフェッション

民主党政府の閣僚による「放言」「失言」が相次いでいます。
何よりも言葉を武器にするはずの政治の専門家の質の低下は 目を覆うばかりです。
プロフェッションは「乱暴な」物言いや考え方をしないものです。
領土問題や国際関係における日本の立場を強化するために 安直に「核武装」を口にする人間は 外交や軍事のプロとはいえません。
介護や社会福祉の実務家や専門家にも そういった傾向が見えるのは残念で仕方がありません。
「介護サービス情報の公表」についての一部の暴論も その例です。
現状の仕組みが 本来の理念や目的にかなったものではないというのは私もそう思います。
この制度の最大の欠点は 利用者の選択に資するものとしながら 使い勝手の悪いものになっているという点です。
これはわが国の行政システムの欠陥が生み出したものだという見解にも 同意します。
しかしだからと言って この制度が「一部の利権を肥え太らせるための装置でしかない」という意見には組するものではありません。
小山秀夫兵庫県立大学大学院経営研究科医療マネジメント専攻教授は 研究論文『介護老人保健施設および慢性期医療機関におけるコンプライアンス経営体制と情報公表制度についての認識との関連』(介護経営第5巻第1号/日本介護経営学会)において「介護老人保健施設ならびに慢性期医療機関の双方おいて コンプライアンス経営といった場合に意識して取り組んでいる内容として最も多いのは 医療法もしくは介護保険法等の法令遵守であり 次いで利用者の権利擁護であった。情報公表制度がコンプライアンスの向上に役立つと考えている場合 コンプライアンス経営体制を推進している傾向があり サービスの質の向上や労務環境の改善に取り組んでいる意識が高かった」という報告をしています。
続けて同論文は「コンプライアンス経営体制構築の自律的な取り組みを促すには 情報公表制度等の利便性向上を図り 活用が推進されることが重要と考えられる」としています。
この見解が正しいかどうかも含めて 専門家同士のていねいな考察と議論が交わされる土壌が生まれなければ 介護事業やサービスは成熟したものとはならないでしょう。

2010年11月15日月曜日

在宅が変われば施設も変わる

12日「介護保険部会・地域包括ケア研究会の読み方-2012年 あなたの事業はどう変わる!?」というタイトルの連続セミナーの第1回を開催しました
この日は「地域包括ケア研究会」報告書の意図を丹念に説明しました。
経営者のみなさんは全員 大きな危機感を抱いて参加されています。
話が進むにつれ「心臓が縮む思いだった」と漏らした方もいらっしゃいます。
それほど これから明らかになる介護保険制度改革はパラダイムシフトを伴う大改革だということです。
実際 この報告書には 2025年には「介護保険施設」は「在宅復帰に向けて生活期のリハビリテーションを集中的に受ける必要がある者のために リハビリテーションスタッフが重点配置された施設」で「病院と住まいの中間施設として位置づけられている…こうした機能を持たない従来型の介護保険施設は『ケアが組み合わされた集合住宅』として位置づけられている」「施設を一元化して最終的には住宅として位置づけ 必要なサービスを外部からも提供する仕組みとすべきである」といった「過激」ともいえる表現があふれています。
当然 施設経営者からは大きな反発が生まれています。
一方 川合秀治全国老人保健施設協会会長は この報告書を受けて導入が検討されている「24時間地域巡回型訪問サービス」について 老健の将来を決定するものとしたうえで「われわれの本来の使命の一つである地域支援に踏み出したい」と述べています。
批判や抵抗だけで保身できる時代は もう過去のものです。
「いいとこどり」ではない 真の「変革」ができる組織だけが 次代を担うことができるのです。

2010年11月8日月曜日

福祉を「人的資源投資」ととらえた改革を

11月5日付の日本経済新聞に「『市場』と『福祉』の改革両立を」というタイトルで 渡辺聰子上智大学教授の論文が掲載されました。
渡辺教授は「従来の日本は市場主義も福祉改革も不十分」「福祉を『人的資源投資』ととらえ改革進めよ」と 主張します。
日本にとっては 市場主義改革の必要性も福祉改革の必要性も欧米におけるよりもずっと大きく 英国のように「自由放任の市場主義」と「行き過ぎた福祉国家」の両方を交互に経験する暇はない と述べています。
そこで 欧州型の社民主義でも市場主義でもない福祉制度改革を実現するための基盤になるのが「ポジティブウェルフェア(積極的福祉)」であるといいます。
これは 福祉を個人や組織の自立を助ける建設的・積極的な「人的資源投資」としてとらえる考え方のことで 特に「可能性の再配分」をもたらす教育の役割は重要としています。
まさに わが意を得たりという論旨です。
わが国の歩む道は「経済再生を果たし 健全な福祉制度を発展させる」しかないのです。

2010年10月27日水曜日

「24時間地域巡回型訪問サービス」の概要

昨日「24時間地域巡回型訪問サービスのあり方検討会」の中間取りまとめが公表されました。
また 本日付の読売新聞では「利用者の自己負担割合を高所得者に限って引き上げること」「ケアマネジメントに利用者負担を導入すること」を検討という報道がなされました。いずれも 明日の介護保険部会で報告・検討がなされます。
中間取りまとめのポイントは次の通りです。
【サービスの対象者像】
○主に要介護3以上の要介護者の在宅生活を維持することを前提するが サービスの対象者は要介護者全般
【訪問サービスのマネジメント】
○事業所がサービス提供のタイミングや回数等を決定する訪問サービスマネジメントを行う
事業所とケアマネジャーは「共同マネジメント」の形で緊密な連携を図り 利用者のニーズに即したプランを作成
【介護と看護の一体的提供】
○事業所に介護職員と看護職員を配置する または外部事業所との緊密な連携を図り介護サービスと看護サービスを一体的に提供できる体制を検討
【随時対応のための体制】
○オペレーターは看護や介護に関する基礎知識と経験を有する者が担当し 看護職員が不在時でも 看護の専門知識を有する職員からの助言が常に得られるような体制を確保
【職員の配置のあり方】
事業所の職員が他の介護サービスとの兼務等について柔軟に対応できる仕組みが必要
○夜間においては 他の24時間対応の介護サービス事業所または施設等との兼務も検討
【サービス提供圏域】
○30分以内で駆けつけられる範囲
一定規模の地域を単一の事業所が担当するエリア担当方式や地域内の他事業所への部分的な委託も含めた柔軟な提供体制の構築を検討
【報酬体系】
○時間単位制に基づく出来高方式ではなく 一定の範囲内で包括定額方式を採用
○包括化するサービス範囲について検討するとともに 他のサービスとのバランスも考慮

2010年10月19日火曜日

生活困窮者支援から雇用・地域経済活性化を!

本日 台東区のNPO法人自立支援センターふるさとの会(代表理事:佐久間裕章氏)を訪問しました。
同会は 1990年にホームレス支援のボランティアサークルとしてスタート。その後 路上生活者などの生活困窮層を主な支援対象者とし 宿泊所の設置運営による住居保障や地域生活へ移行した後のアフターケアさらには稼動年齢層への仕事づくりなどを行っています。
現在は 関連8法人で従業員186名 事業規模はおよそ7億1千万円(2009年度)に上ります。
昨年度「支援付き住宅研究会」を立ち上げ 厚生労働省記者クラブで「高齢の生活困窮者が安心して生きていける『支援付き住宅』の緊急提言」も行っています。
支援付き住宅というのは 生活保護費で払える入居費で 職員が24時間常駐し 食事や生活支援に加え 介護保険サービスや在宅医療も活用する施設です。
同会の支援付き住宅は コストを抑えるために 古い旅館を買い取って活用したり地域の民家を改装するなどの工夫を施しています。
佐久間代表理事は「生活困窮者や高齢者の問題は『まちづくり』の視点がいないと解決しない。民間資本を活用すれば雇用開発や地域経済への波及効果も小さくない」と話してくれました。
ここにも 制度のはざまの社会問題を "Warm heart & Cool Head" で克服しようとしている仲間がいます。

2010年10月15日金曜日

新厚労相は官僚の味方?

今日の日本経済新聞に「週末出勤や報告義務『長妻ルール』形骸化」という記事がありました。
「厚生労働省で長妻昭前厚労相が命じた省内ルールをなし崩し的にやめる動きが進んでいる。政務三役が週末に大量の職員を登庁させることがなくなったほか 職員が政治家と接触したことなどを大臣に報告するルールの厳守も緩んでいる。省内からは『官僚主導が完全に復活した』(厚労省幹部)との声もでている。… 『厚労省改革』を訴えて乗り込んできた長妻氏が去り 官僚が前面に出て動き始めた。政治主導の後退なのか 長妻氏の空回りだったのか。細川氏の手腕が問われる」
というものです。
これまでマスコミには 長妻昭前厚労相は最も評判の悪い大臣の一人として名前が上がっていました。
7/29付の同紙でも「『政務三役らと信頼関係ない』厚労省若手職員が苦言」というタイトルで「長妻昭厚生労働相が28日に開いた若手職員による省内改革案の報告会で さまざまな改革案とともに政務三役らへの苦言もあがった」としています。
しかし 本当に長妻氏はダメ大臣だったのでしょうか。
細川新大臣が辞めるころには「官僚のいいなり大臣」というレッテルが貼られているかもしれません。
二枚舌(?)のマスコミ報道ではなく事実を見つめないと 誤った評価を下してしまいます。

2010年10月12日火曜日

不当な指導・ローカルルールに従わされる事業者

10・11日とNPO在宅ケアを支える診療所・市民全国ネットワーク主催の「第16回全国の集いin名古屋2010」が開催され 私も参加しました。
11日には 私もメンバーとなっている「医療福祉法務研究会」の会員によるシンポジウム『納得できない行政指導・ローカルルール』が開かれました。
事業者ならだれでもぶつかる 自治体による誤った指導やローカルルールにどう対応するかがテーマでした。
介護保険法における基準等の解釈の部分については 国がすべて統一して運用するのではなく 都道府県あるいは保険者ごとに裁量権が認められています。これがいわゆるローカルルールとなっています。
私は こうしたローカルルールの存在そのものを問題視しているのではありません。地域における保険者の裁量権が認められないとすれば 介護保険制度の「市町村中心主義」の意義が失われてしまうからです。
問題は 裁量権を超えたあるいは法令を無視したローカルルールが存在する点にあります。


この日も 訪問介護の散歩動向や生活援助の問題 介護タクシーをはじめとする移動サービスの自治体ごとの差異などがパネリストから指摘がありました。
会場からも「訪問介護の院内介助でヘルパーが座っている時間はサービス提供時間に含めない」と指導され 報酬返還を余儀なくされた事例などが報告されました。
「しっぺ返し」を恐れて 不当な指導に従わざるを得ない事業者の弱い立場が浮き彫りになりました。

2010年10月6日水曜日

ポピュリズムを排するのは「民」の成熟度

今朝「タイ・バンコクなどの非常事態宣言を3カ月延長」という新聞の見出し(日経朝刊)が目に入りました。
記事は「タイ政府は5日 首都バンコクとノンタブリ・パトゥムタニ・サムトプラカーンの周辺3県に発令中の非常事態宣言を来年初めまで3カ月間再延長することを決めた。7日に期限を迎えるのに伴う措置。バンコクは爆発事件などが依然頻発。5日夕にもノンタブリ県で起きた爆発で約10人が死傷するなど 治安は再び悪化している」と報じています。

私が 先月初め"CTOP"という JICAとタイ国保健省のモデル事業で 老人ホームや在宅高齢者宅を訪れたのがノンタブリ県でした(右写真)。 
現地の人はこの春の混乱について「日本の『軍事暴動』という報道は過剰」と話していましたが 心配になる記事です。
当地での タクシン派と反タクシン派(アピシット首相)の対立には根深いものがあります。
医療サービスについても 2002年にタクシン政権が「30バーツ政策」を打ち出した後 06年9月のスラユット革命政権が「無料」に改革。また現アピシット政権は「高齢者全員に月額500バーツの手当」に加え これまで無償だった「保健ボランティアに月額600バーツの手当」を支給するなど バラマキ合戦の様相を呈しています。
日本でも同様に「子ども手当」「高速道路無料化」など 選挙目当ての政治現象が起きています。 
同じ今日の日経新聞(地球回覧)には「政治の迷走は日本も深刻だが 少なくとも聞こえのいい政策に受益者の有権者から疑問と批判の声が上がるような成熟度がタイにはない」とありました。

2010年9月30日木曜日

他人の話を自らに活かす

昨日までの5日間で 5回講演を行いました。1日2回合計6時間半という日もあって 少々疲れはしましたが 当然のことながら 私の話を聴いてくださることの喜びのほうが勝っています。
講演中は 参加者のリアクションや表情をよく見るように心がけています。
中には 自分の意志で参加したのではないようで ずっとお休みになっている人もいますが ほとんどはなんらかの反応を示してくれます。
大きくうなづいて聴いている人 驚いたような表情を見せる人などさまざまです。
話の中では あえて挑発的な発言や足りない点を厳しく指摘することも少なくありません。
そんなときには 参加者本人や組織の認識の程度がはっきりわかります。
「とてもそんなことはできない」「うちの法人ではムリ」など 否定的な感情も 手にとるように感じられます。
講師の意見に無条件に賛成するのもいかがかとは思いますが「総論賛成でも各論(わが身に引き当てると)反対」では 学ぶ意味がありません。
事業を行う身であれば「ありがたいお話し」など聴いている暇はありません。
同意や反発 すべて自分たちの組織や事業をどう改善するかという視点を常に忘れずに 講師に向かって反応してみてください。
きっと 得られるものが何倍にも大きくなるはずです。

2010年9月19日日曜日

小規模多機能で尺八を聴く

昨日の夜 静岡県焼津市の小規模多機能型居宅介護事業所「池ちゃん家」大井川で 縄巻修巳氏の尺八のコンサートが開催されました。
今年で3回目とあって 利用者・職員だけでなく ご近所の方やファンも大勢つめかけ 中に入りきれない人が出るほどの盛況でした。
私自身は実際に聴いてみるまで 尺八で洋楽まで演奏するといわれても 一体どんなものかイメージがわいてきませんでした。
今は ぜひ別の機会にもう一度聴いてみたいという気持ちです。
どこか哀調を帯びた音色が 秋の夜に響き 聴衆の心に沁み入りました。
音楽には ハードロックのように 聴き手の中に圧倒的な印象を与えるものもあれば この尺八のように 聴き手の心の中の思い出を引き出してくれるものもあります。
忘れていた数々の出来事が 走馬灯のように頭の中を駆け巡り 久しぶりに心を洗われたコンサートでした。

2010年8月10日火曜日

経済成長と福祉を両立させるビジネスモデル


このほど 弊社の取り組みが 経済産業省の「医療・介護等関連分野における規制改革・産業創出調査研究事業」に採択されました。
「地域に眠る有資格者の自営起業化による新産業創出プロジェクト」といネーミングで 看護師をはじめ潜在する地域の人的資源を活用し 都市型のコミュニティを再構築し「無縁社会化」を阻み 内需・雇用を創出するための新しいビジネスモデルです。
[詳細は ニュースリリース
http://www.well-be.net/overview/img/100810keisannews.pdf
をごらんください]
これまでも NPOと協働して 高齢化・独居化が進む「UR高根台団地」(千葉県船橋市)で 介護サービスの提供・ウェブを活用した住民同士の絆づくり・安否確認などの住民の課題解決に取り組んできましたが この取り組みを加速させるために 国の事業を活用することにしたものです。
基本コンセプトは「自営起業」です。
「自営起業」とは 地域の中で 個人が自己責任のもと フレキシブルな(時間や地域等)働き方で 利用者と「顔の見える」「なじみ」の関係で結ばれた信頼関係に基づいた新しい事業形態です。
この試みが成功すれば 経済成長と福祉を両立させることが可能になり 現在話題となっている「所在不明の高齢者」問題解決の一助にもなると考えます。

※ 公募内容・採択結果は 株式会社三菱総合研究所のホームページ
  http://www.mri.co.jp/NEWS/press/index.html  をご覧ください。

2010年8月5日木曜日

自ら考える・行動する自治体職員に


昨日「救え!超高齢社会 介護・医療・予防」(主催:時事通信社)に参加しました。
自治体の福祉・保健・高齢者・介護担当職員向けに 高齢社会と介護保険に係る行政の果たす責務を中心に構成されたものです。
介護保険の「生みの親」である社会保障審議会介護給付費分科会の大森彌分科会長の「介護保険の精神を歪めようとする動きとは徹底して戦う」という決意が「問題提起」として述べられました。
その反・介護保険の動きとは
「多床室推進派の自治体(中でも首長)や社会福祉法人」
「要介護認定を不要とする勢力」
であると 明確に指摘しました。
「多床室では人間の尊厳を守れない。自分だったらどういう地域に住みたいか どういうサービスを受けたいか考えなければならない。自治体職員も自ら基準を考えよ」という主張は 地方分権推進派の行政学の第一者として重みのある言葉でした。
介護保険の「保険者」である市区町村が「地域主権」の核として機能しないことには 豊かな未来はあり得ません。

2010年7月21日水曜日

国民と社会のための市民運動を


18日の日曜日「介護の社会化を進める1万人市民委員会」の活動再開を記念したシンポジウムに参加してきました。
同委員会は1996年に堀田力氏と樋口恵子氏が共同代表となって設立され 介護保険制度創設時に積極的に政策提言を行ってきました。
今回は「介護の社会化を進める1万人市民委員会2010」という名称 次期介護保険法改正や介護報酬改定に向け約4年ぶりに活動を再開します。
気がかりは 樋口氏が共同代表を降りたことです。
同氏が「介護保険を持続・発展させる1000万人の輪」の活動を中心に行うというのがその理由です。
「1000万人の輪」は3月に「現行の要介護認定区分の7区分を3区分(軽度・中度・重度)に粗くし 将来的には認定システムや支給限度額を撤廃」するという提案書を厚生労働省提出しています。
それに対して 堀田代表をはじめとする1万人市民委員会の役員は「要介護認定は介護保険制度の根幹で絶対に必要」という主張です。
私自身も この点は理解できます。
しかし 国民の利益と社会の発展に資するはずの市民運動が「体制支持VS反体制」というステレオタイプの色分けされる事態は「害あって益なし」です。
情緒論や感情論をぶつけ合うのではなく 科学的・社会的な多様な観点から 理論的に意見を交えていくことができなければ 運動は不毛なものとなる事実は 歴史が証明しています。

2010年7月16日金曜日

キャリアの旅立ち

本日 キャリア官僚のFさんから「海外留学が決定した」とご挨拶がありました。
厚生労働省の職員ではありませんが 医療・介護分野を希望していたため ポストが新設され希望通り配属になりました。
私とは「経済成長戦略」策定に関わる仕事でご縁ができました。
彼らの努力によって 経済成長戦略に介護分野の効率化や規制改革が盛り込まれ さらに厚生労働省とも合同して政策提携していこうという流れにもつながりました。
省益にとらわれず 国民・国家のために仕事をするという本来の国家公務員の使命に燃えている人が大勢いるということを肌で知り 心強く思いました。
新たな経験を糧に いつの日にか どこかの自治体の首長となって 理想の実現に向かってまい進してくださるよう祈っています。

2010年7月7日水曜日

国民の声がつくる少子高齢国家のトップモデル

昨日 内閣府の行政刷新会議「規制・制度改革担当事務局 国民の声担当室」の お二人の参事官補佐と「看護師の一人開業」を中心にお話をさせていただきました。
6/14のブログ「冷えた夫婦関係を打ち破るアリの一穴」でもご紹介したとおり 先ごろ行政刷新会議の「規制・制度改革に関する分科会」は 医療・介護など成長分野の規制を見直すための第一次報告書をまとめました。
当初 行政刷新会議のライフイノベーションWG(ワーキングフループ)の議論では 規制改革の要望事項として「訪問看護ステーションの開業要件の緩和(一人開業の解禁)」が提示されていました。
しかし 最終的に第一次報告書では「要望事項」ではなく「今後の検討項目」として「問題提起」にとどまりました。所轄の厚生労働省との折衝で 合意に至らなかったということです。
一人開業反対の論拠は「サービスの質が保てない」「経営が安定しない」の2点に集約されます。
しかし いずれについも 一人訪看ステーションのほうが中規模(2.5人)ステーションより有利なことを示す材料が提示できます。
《問題の本質》  看護師「資格」不足ではなく看護師「機能」不足
《サービスの質》「外形基準・ストラクチャー」評価ではなく「性能基準・アウトカム」評価
《経済合理性》 「規模の利益」の否定ではなく「自営起業」型の新しいコミュニティビジネスモデルの育成

へとパラダイムシフトができれば解決できるのです。
そういう意味では 今回一人開業が議論のテーブルに上ったという事実は「国民の声」を反映したいという政府の姿勢のchangeと 前向きにとらえることができます。
けれども 残された時間は多くありません。政官民が 既成概念や既得権益の制約を乗り越えて 少子高齢国家のトップランナーとしてのモデルを創り上げていかなければなりません。

2010年7月5日月曜日

付加価値の高いケアマネジメント

3日(土曜日)に 3人の介護支援専門員の人たちと 楽しい夕べを過ごしました。
狭山市の独立型ケアマネの長谷川佳和さん・鶴岡市の成澤正則さん・多摩市役所の介護保険担当課長の伊藤重夫さんです。
それぞれ この世界ではよく知られた方々ですが 長谷川さん以外は初対面でした。それでも 会った瞬間から 旧知の友のように 話が盛り上がりました。
ケアマネジメントを中心にした介護や生活支援から 東北・北陸の日本海側の猛暑まで 話題は多岐にわたりました。
その中で一同がうなづいた指摘のひとつに「介護支援専門員の研修で インフォーマルサービスだけのプランを作ってみる」というものがありました。
ソーシャルワークを担う介護支援専門員の力量を図り・高めるために有効であるだけでなく 足りない社会資源に気づき さらに開発するという行動にまで結びつけば最高だ と意見が一致しました。
介護「保険」専門員ではない 介護支援専門員が本来求められるスペシャリストとしての価値は ここにあるはずです。
また そんなスペシャリストたちがここにいるという事実が 明るい希望をもたせてくれました。

2010年6月29日火曜日

看護師の3人に1人は「生まれ変わっても看護師になりたい」


「DODAナース」(株式会社インテリジェンス)が 関東・関西・東海エリア在住の看護師589人を対象に実施した 仕事の満足度調査結果が公表されました。
「生まれ変わったら何の仕事がしたいか」を聞いたところ 「看護師」が33.1%で 2位以下に大差をつけての1位。次いで「医師」(5.9%)・「専業主婦・主夫」(5.4%)という結果になりました。
看護師以外の職種も含めた3万人に同様の質問をし 現職を選んだ人の割合を職種別に比較した結果でも「医師」(41.3%)・「SE・プログラマ」(40.0%)に次いで33.1%と3位にランクインしています。
同社では
○「誰かのために何かをしてあげたい」という気持ちが強いため 大きなやりがいを感じている人が多いこと
○ 看護師という仕事が 他職種に比べて 恒常的に売り手市場にあること
を その要因に挙げています。
にもかかわらず 仕事についていない「潜在看護師」の存在は「働きたくとも働けない環境にある人が多いこと」を物語っているのでしょう。

2010年6月28日月曜日

30年を過ぎても輝き続ける企業

26日 株式会社ライフ・トータルサービスさんの 30周年記念パーティーに出席させていただきました。
俗に「企業30年説」という言説がありますが 家政婦の有料職業紹介からスタートし「付添看護の廃止」「介護保険制度導入」「労働者派遣法の制定」をはじめとする 社会・制度変革の洗礼を受けながらも発展してきた訪問介護事業者は少なくありません。
度重なる制度改正の影響で苦戦を続ける訪問介護ですが それ以上の大きな波を乗り越えてきた経験やパワーを持っている事業者も多く存在しています。
在宅生活を支える「地域包括ケア」に舵を切ろうとしている現状は 必ずしも否定的な要素ばかりではありません。
30年の寿命を過ぎた後も輝きを保つカギは「自己変革を続けることにある」といえるでしょう。

2010年6月14日月曜日

冷えた夫婦関係を打ち破るアリの一穴

さきごろ 政府の行政刷新会議は「規制・制度改革に関する分科会」を開き 医療・介護など成長分野の規制を見直すための第一次報告書をまとめました。
医療・介護分野の主な規制改革事項には 次のようなもがあります。
○保険外併用療養の範囲拡大
○「内外に開かれた医療先進国・日本」に係る査証発給要件等の緩和・外国人医師の国内診療等等
○医行為の範囲の明確化(診療看護師資格の新設)(介護職による痰の吸引、胃ろう処置の解禁等)
○特別養護老人ホームへの民間参入拡大(運営主体規制の見直し)
○介護施設等の総量規制を後押ししている参酌標準の撤廃
○訪問介護サービスにおける人員・設備に関する基準の緩和(サービス提供責任者の配置基準)
このうち「参酌標準撤廃」については 厚生労働省も第5期の介護保険事業計画から実施される予定です。
医療分野については「混合診療」や「医療ツーリズム」の表現が消えたことなどから「踏み込み不足」との指摘もありますが 逆にいうと そこが「本丸」であるということです。
議論の中では 規制改革推進者と所管官庁の厚生労働省との関係を「非常に関係が冷え切った夫婦が今後どうするかみたい」と 評する委員もいました。
この報告書が これまで何度も撥ね返されてきた既得権益の「壁」を崩すための「アリの一穴」であることを望んでやみません。

2010年6月8日火曜日

もの言う看護師 もの言う介護士

6日の日曜日に「みんなで考えよう 訪問看護と在宅ケア」(全国在宅医療推進協会主催)という市民公開講座に参加してきました。
そのパネルディスカッションの中で 児玉有子氏(東京大学医科学研究所 特任研究員)から 新世代の看護師は「医師と学生時代から対等な教育を受けているという意識が強いため 対等に話し合えることは普通のことだ思っている」という発言がありました。
なるほど 同じ教室で講義を受けたり 同じクラブに所属したりしていれば きわめて当然のことだろうと思います。
「もの言う看護師」は普通になりつつあるということです。
そうすれば ことさら「チーム医療が大切」ということを強調しなくてもいいという環境が生まれます。
「医療・看護と介護の連携」という古くて新しい課題についても 同様のことが言えます。
生活を支える専門家としての「もの言う介護士」が チームケアを支えていく日が来ることを願っています。

2010年5月24日月曜日

焼津の地に またひとつ希望の種が


昨日 全国ボランティアナースの会・キャンナスの焼津(静岡県)支部の発会式(発足記念会)に行ってきました。
強い風雨にもかかわらず 38人の方々が参加されました。
「地域包括ケア」がめざす姿として示されていますが そのためにはハード面の整備以上に 安心して自宅で地域で最期まで暮らすための看護師の役割は重要です。
在宅療養支援診療所を運営されている松村剛医師も スムーズに療養者の家庭環境を把握し 適切な支援を行うためには看護師の力は不可欠だということを力説されていました。
しかし 同氏によると 藤枝市ではこの1年間に 5か所もの訪問看護ステーションが閉鎖に至ったということです。
困難をものともしない池谷千尋キャンナス焼津代表の 意思と行動力に敬意を表するとともに この日 沼津・桑名・名古屋・藤沢・横浜・横須賀の各地から駆けつけたキャンナスのみなさんをはじめ 志を同じくするお仲間が 全国43か所に広がり さらに発展し続けていることに 意を強くしました。

2010年4月30日金曜日

院内介助利用者と訪問介護事業者に朗報

4月28日 厚生労働省老健局振興課は 都道府県・指定都市・中核市の介護保険担当課(室)あてに 訪問介護による院内介助を一律禁止を改めるよう 事務連絡を発出しました。
従前から「基本的には院内のスタッフにより対応されるべきものであるが 場合により算定対象となる」とされていましたが 多くの自治体では 事実上一切の介護報酬上の算定が拒否されていました。
この事務連絡では
①適切なケアマネジメントを行った上で
②院内スタッフ等による対応が難しく
③利用者が介助を必要とする心身の状態であること
がを要件としている自治体が多いとして 実際の対応例を示しています。
事業者そしてなにより院内介助利用者にとっては朗報です。
ただし「院内介助が認められる場合については各保険者の判断となる」ことには変わりがありません。
訪問介護の「散歩同行」や「同居者がいる場合の生活援助」について 同様の事務連絡が存在するにもかかわらず かたくなに認めないという不当なローカルルールを墨守している保険者がいるのも事実です。
法令の精神と意義の遵守は 行政が自ら体現してもらわねければなりません。

2010年3月26日金曜日

国民皆保険は人権侵害!?

さきごろ オバマ米大統領が内政の最重要課題に掲げた医療保険改革法が成立しました。
日本のような公的保険制度の創設ではありませんが 国民の保険加入を事実上義務化し 米国内の無保険者数は3,200万人減少し 国民の95%が医療保険に加入するようになります。
国民皆保険の恩恵に浴している日本人にとっては 当たり前と思われる改革ですが 全米14州の司法長官が「改革法は保険加入を強制し人権侵害の恐れがある」と違憲訴訟を起こしました。
新たな負荷によって 雇用や経済成長が危険にさらされるとの 大企業を中心とした懸念に加え 増税や規制強化がアメリカの建国の精神に反する という根強い不満が底流にあります。
文化や国民性には かくも大きな隔たりがあるのかと驚くとともに それを乗り越えようとする大統領のリーダーシップに敬意を表したいと思います。

2010年3月25日木曜日

大森分科会長が政務三役の出席を要請-給付費分科会

さきほど 第65回の社会保障審議会介護給付費分科会が終了しました。
調査実施委員会における検討状況や要介護認定の見直しに係る検証・検討会についての報告が 主な内容でした。
異例だったのは 最後に 大森彌分科会長が 給付費分科会に厚生労働省の政務三役の出席を要請したことです。
現在の委員は 前政権から引き続いて審議を行っており 2009年度の介護報酬の改定を行った際には 今後の方向性を踏まえた「審議報告」も行っています。
「このままでは2012年度の報酬改定時には大幅な保険料引き上げが避けられない」「これまでどおりの方針に従って審議を継続していいのか」について 明確な指示を求めたものです。
私も 昨年6月24日のブログで「審議会にも政治家の出席を」と述べましたが「政治主導」を標榜する現政権ならなおのこと 自らの姿勢を示す必要があります。
高齢者施策以外にも 不透明感が充満している今こそ 政治の責任者が 自らの言葉で 私たち国民の将来を語ってほしいと強く願います。

2010年3月16日火曜日

音楽体験も「三つ子の魂」


先週末久しぶりに さいたまスーパーアリーナでロックコンサートを堪能しました。
出演したのは 9年ぶりの日本公演となるAC/DCです。1970年代の初期から休まず活動を続けているライブバンドで 熱狂的ファンが多いことでも知られています。
メンバーも 50代半ばから60代と高齢化していますが パワーは衰えることを知りません。
昨年観た映画『シャイン・ア・ライト』のザ・ローリング・ストーンズもそうでしたが 若いころに影響を受けた音楽は 歳をとっても同じ感激を与えてくれるものです。
やっぱり団塊の世代以降の人間は 民謡や演歌より「ポップスの歌えるデイサービスに行きたい」だろうと思います。

2010年2月18日木曜日

介護職に技能検定

咋日の日本経済新聞の1面に「介護や観光 働く技能にお墨付き 11年度にも検定制度」という見出しが躍りました。
「働き手の実務能力を業種ごとに客観評価する新たな検定制度が2011年度にも創設される見通しだ。『介護』や『観光』など雇用拡大が見込める分野で 業界ごとに実務経験などを加味した能力水準を定め 再就職や転職に生かせる仕組みをつくる。…厚生労働省は制度導入を後押しし 雇用市場の活性化につなげる。日本の労働市場では 弁護士や医師など業務を担うのに必要な資格はあるが 労働者が持つ実務面での技能などを評価する取り組みは進んでいない。例えば介護分野では介護福祉士などの資格があるが 実務の未経験者も介護現場で経験を積んだ人も資格は同一だ。技能評価の新制度は 特定の業界内で共通して必要とされる知識や技能について統一的な基準を設けるもの。検定での評価は転職などの際の『お墨付き』と位置付けられる…」
というものです。
もっともな内容ですが キャリアパスもこれからという介護業界では まず介護職の評価基準やキャリアアップのステップ(キャリアラダー)を 個々の事業者レベルではなく 業界レベルで議論構築するのが先決だと思われます。
まず 医療からはじめてもらうのが 顧客の立場からも望ましいですね。

2010年2月10日水曜日

制度を超える事業展開が介護事業者自立の条件

本日の日本経済新聞によると ニチイ学館の2010年3月期(通期)連結業績予想数値の修正が発表され「損益は上方修正 売上は下方修正」されたということです。
プラス要因は「ヘルパー養成事業の好調さ」「居宅介護支援・訪問介護・通所介護の収益性の改善」
マイナス要因は「訪問介護の利用者の伸び悩み」
だということです。
「プラス報酬改定」と「景気後退」が利益を押し上げ かつ売上をダウンさせた といってもいいでしょう。
「準市場」の宿命といってしまえば 身も蓋もありません。
業界のリーディングカンパニーにしてこの状況です。あとは「推して知るべし…」なのでしょうか。
産業化に向けた ひとつの課題がここにもあります。

2010年2月8日月曜日

金曜の夜に議論して…

ウィンストン・チャーチルの「実際のところ 民主主義は最悪の政治形態と言うことができる。これまでに試みられてきた民主主義以外のあらゆる政治形態を除けば だが…」は あまりにも有名です。
たしかに 民主主義のプロセスは「隔靴掻痒」といえます。
論点をはずれた発言や議論の蒸し返しに 辟易することもままあるものです。
しかし議論を重ねていけば「話せばわかる」ことや「なんだ 同じことを考えていたのか」という思いにいたることも少なくありません。
地位や立場が発言を拘束するなら その枠を取り払ってみる機会を設ける努力をしてみることも無駄ではないはずです。
「声の大きい人」が支配するのではなく 時間はかかっても「手段が目的化」しない ホットでかつクールな論議が継続的にできれば「モアベター」(「小森のおばちゃま」語ですが通じるかな?)な世の中になるのでは と感じました。

2010年2月4日木曜日

アーティストの心意気

一昨日(2月2日)岡山市内で 「特定非営利活動法人AMDA」理事長で医師の菅波茂氏と お目にかかる機会を得ました。
AMDA(本部:岡山市)は 災害や紛争発生時に多国籍医師団を結成し 医療・保健衛生分野を中心とした緊急人道支援活動を展開するNGOです。
ハイチ地震に対しても いちはやく緊急医療支援チームを派遣したことは 報道を通じてご存知の方も多いでしょう。
菅波理事長のお話は どれも楽しくしかも示唆に富むもので たいへん有意義な時間を過ごすことができました。
その中で菅波理事長は 「人道支援活動ボランティアはアートだ」 とおっしゃいました。
被災地に入るまでの手配はなんとかできるが その後のことはすべて白紙。
活動をどのように展開するかは 個人個人が 現地の状況やニーズを見極め あたかもキャンバスに絵を描くように創造していくものだ。
という意味です。
このお話が私の心に響いたのは 事業や介護・福祉の日々の活動も同じことだと感じられたからです。
“art” の語源は ラテン語の 「技術」 を意味する “ars” にあります。
経営者も現場の職員も アーティストの心意気を忘れずにいたいものです。

2010年1月26日火曜日

波乱の時代に求められる人材は

先週の土曜日 元財務官僚が講師の 医療制度に関する講演を聞きに行きました。
「医療崩壊」といわれる現状の解説とその要因分析について わかりやすく整理された内容でした。
しかし ある程度「事情通」といわれる人間にとっては 「なるほど」と思わせる内容だったとは言い難い というのが正直な感想です。
現場の医療関係者 特に経営者にとっては 今後の事業の方向性を考える「よすが」とはならなかったのではないか と思われます。
また 参加者から「医療再生のポイントとして示された『地域の再生』と『死生観』について どういう方向性が考えられるか」という 当を得た質問がなされましたが 講師からの回答は 一般論の域を超えるものではありませんでした。
この一事をもって 「すべて同様」と断言しようとは思いませんが いま本当に求められるのは 整理・分析する能力ではなく 創造・改革を実行する能力です。
いわゆる「官僚的」な人材ではなく 「民間のリーダー的」な人材です。
「民間人であればいい」のではありません。
民間の人材でも「官僚的な」人間は あふれるほど存在しています。
先の見えない時代だからこそ 真の「民」の知恵とパワーが 社会を動かす原動力になるのです。

2010年1月21日木曜日

Change できますか?

私の好きな言葉のひとつ(昨年の10周年記念のパーティーや今年の年賀状にも引用しました)に
In any moment of decision the best thing you can do is the right thing, the next best thing is the wrong thing, and the worst thing you can do is nothing.
があります。
これは 第26代アメリカ合衆国大統領セオドア・ルーズベルトの言葉です。
日本人にとっては「ポーツマス条約」(日露講和条約)の斡旋役として 親日家のイメージが強くありますが アメリカ国民にとっては 米西戦争の指揮官として強く印象付けられているようです。
「流れに身を任せ何もしないより たとえ間違ったものだとしても 決断ことをするのがリーダーの責務だ」という力強いメッセージに 何度も勇気づけられました。
変えることが困難な状況であっても「決断・行動しよう」というフロンティア精神は 党派を超えて(ルーズベルトは共和党)現在のオバマ大統領まで 脈々と引き継がれています。
「難しいからやらない」「検討はするが行動はしない」では「座して死を待つ」しかありません。
介護や福祉の経営者・リーダーも 日航の現状を「他山の石」としなければ 同じ結末を迎えるしかありません。

2010年1月18日月曜日

明るい未来を創る たくさんの人たち

昨日 藤沢市で開催された「第11回湘南在宅ケアセミナー ~医療行為って何? ヘルパーにも出来る!? やりたい!? やらせたい」に行ってきました。
ラッパー(ミュージシャンではありません。褥創治療のニューウェーブです)の鳥谷部俊一先生 NST看護師の中村悦子さん ジャーナリストで国際医療福祉大学大学院教授の黒岩祐治先生 の講演は どれも新たな気づきを与えてくれました。
また 参加された方々の一途なパワーにも 力づけられました。
全国各地のキャンナスのメンバー 誕生日と重なった「ひぐらしのいえ」の安西順子さん 『ニルスの国の高齢者ケア』の藤原瑠美さん 東海大学(ほんとは吉本興業?)の谷亀光則先生 焼津の「池ちゃん家・ドリームケア」の池谷千尋さんはじめ ここに書ききれないくらいたくさんの 少年少女のように目を輝かせた人生真っ盛り世代の人たち そして瑞々しいナースケアーの職員のみなさん からも刺激をもらいました。
ありがとうございます。
みなさんの日々の活動が「幸せな社会」を創る原動力です。

2010年1月16日土曜日

「裸の(女)王様」は いませんか?

1月10日のブログで 介護や福祉事業は「女子一生の仕事」と書きましたが それを読んだある人が「女性ならだれでも介護事業に向いていると思ってもらっては困る」と感想を述べてくれました。
そう話してくれた人も女性ですが「職務内容から職員の配置・職場のインフォーマルなルールにいたるまで すべて自分の好き嫌いで決めてしまう女性経営者に振り回されて 嫌気がさした」そうです。
男女を問わず 経営者には「職員に未来の姿を提示するという最大のミッション」(1月14日のブログも読んでください)があります。
個人的な嗜好をあらわにしてマネジメントに臨むのは「経営者失格」といわざるを得ません。
私は講演で 介護事業の経営者をカリカチュアライズすると
①「夢見る夢子チャン」タイプ
②「やり手婆」タイプ
③「自称デキル経営者」タイプ
の3つに分類される とお話ししています。
このようなタイプの経営者のもとで働く職員は 好むと好まざるにかかわらず「疲弊」「萎縮」「面従腹背」の いずれかに陥ることになります。
いうまでもなく 最も不幸なのは「顧客」です。
経営者は 身のまわりに いくつもの「鏡」(職員の表情や態度も大切な鏡です)を置かなくてはならないのです。

2010年1月14日木曜日

事業者の真摯な姿勢が未来を拓く

一昨日・昨日と厚生労働省(茨城労働局)介護雇用管理改善推進事業の「キャリアパス研修会」の講師として 水戸市と日立市で講演を行ってきました。
今年一番の冷え込みにもかかわらず 両会場とも熱心な受講者が集まり 熱気が感じられる研修でした。
「経営者の最大のミッションは職員に未来の姿を提示すること」という 私の持論にそって「キャリアパスを含めた『トータルな人事管理育成制度』の構築が その大切なツールだ」というお話をさせていただきました。
お集まりいただいた 介護事業経営者・管理者のみなさまの 真摯な姿勢を目の当たりにして 未来は 決して暗くないという感慨を抱きました。
来週は 土浦・下妻で 同様の講演を行います。
また 熱意にあふれた介護事業に携わる方々とお会いできるのが楽しみです。

2010年1月10日日曜日

女子一生の仕事

明治の文豪・夏目漱石は『文芸は男子一生の事業とするに足らざる乎(か)』という論文で「私は文芸を以(もっ)て男子一生の事業とするに足る」と述べています。
では現在 介護や福祉はどうなのでしょうか。
旧世代の政治家やメディア関係者の言葉の端々からは「介護や福祉は大事な仕事ではあるが 私(男)が携わるに足る事業ではない」というニュアンスが伝わってきます。
また「介護や医療の産業育成」というと「社会保障を手厚くすれば 経済成長の足枷になるだけ」「企業に活力を与える政策でなければ 経済は成長しない」という反応が返ってきます。
介護サービスの一方の担い手が営利企業であることや 社会保障の枠外にも大きな需要が存在することなど全く理解していません。
因習にとらわれた男は「百害あって一利なし」。そんな男子は もう必要ありません。
「女子」が この分野を支えていけばいいだけです。
一生を賭けた「女子」が 豊かで幸せな時代を創るパイオニアです。

2010年1月8日金曜日

「人を大事にする」政策に期待

昨日の「鳩山内閣メールマガジン」に
「昨年末 鳩山内閣として、最初の本格的な予算編成である平成22年度予算について『いのちを守る予算』と名付け 子ども手当や高校の無償化をはじめ 雇用・医療・環境など 人の命を守るための予算の確保に全力を傾けました。また、「新成長戦略」の基本方針を閣議決定し、これまでの企業側(供給サイド)に偏っていた政策の発想を 国民のみなさまの生活(需要サイド)を中心とした発想に 人間のための経済に変えていくこととしました。…その際 一番大切なことは『日本の強み』を活かすことです。…高齢化の進展をリスクではなく『健康長寿社会』をつくるチャンスと捉えること。医療・介護分野の革新(「『ライフ・イノベーション』)により 医療や介護 健康関連産業を成長産業とすることで 45兆円の新規市場と280万人の新規雇用を生み出します」
とあります。
「人を大事にする」政策の「有言実行」に期待したいと思います。

2010年1月5日火曜日

日本をアジアの「生活支援事業のハブ」に

今日の日本経済新聞の「経済教室」欄に 経済産業研究所長の藤田昌久氏が「日本 アジアの『知のハブ』に」というタイトルで 論説を執筆しています。
氏は「超高齢社会に突入しつつある日本は 医療・介護産業を伸ばすだけでなく 上勝町のような革新的なビジネスモデルを通じ 高齢者が生涯いきいきと活躍できる社会を志向することが重要なのだ」と主張しています。
上勝町(かみかつちょう)は 徳島県の中部に位置する過疎の町です。女性や高齢者でも生産でき付加価値が高い料理に添える「つまもの」が市場で優位に立てるよう ITによる情報化を進めてきました。
その結果 パソコンを使いこなせるようになった農家の高齢者が「葉っぱビジネス」で大きな成功を収め「全国ふるさとづくり賞」の市町村の部で内閣総理大臣賞も受賞しています。
高齢化率は48%で全国でもトップレベルですが 老人医療費は県内で最低です。
上勝町に限らず 全国各地に このような好事例が存在しています。
介護事業が「生活支援事業」へと進化・発展すれば「日本がアジアのハブになる」夢は 現実になるのです。