2012年12月7日金曜日

次世代に「希望」と「誇り」を伝える

今日 文京シビックセンターで開催中のイベント「アクティブ介護24」に行ってきました。
「介護の魅力を伝えたい!」というテーマで 文京区内の介護事業所が集まって実行委員会をつくって主催しています。
私は飯塚裕久さんがコーディネーターを務める「13年後の私たちへ(2025年の介護)〜2025年の未来の介護を考える〜」というグループセッションに参加しました。
「2025年75歳を迎える世代と2025年福祉を牽引する世代との未来予想図を描く」というコンセプトで 10代から後期高齢者まで 多世代が「ワールド・カフェ」方式でワークを行うものです。
なによりうれしかったのは 若い福祉専門学校生が真摯に介護に向き合っていることが感じられたことです。
「自立支援を実践したい」という意見に対して「実習へ行って理想と現実のギャップに唖然とした」という声が上がります。
「いくら利用者とコミュニケーションを取ろうと思っても人手が足りずまるで流れ作業。これでは『自立支援』など到底ムリ」
このような一見ネガティブな意見も 彼(女)たちが真剣に考えているから生まれる悩みなんだと分かりました。
先週末は ここ3年間続けている「ISFJ 政策フォーラム」にゲストとして大学生の政策提言へアドバイスを行ってきましたが ここでも同じような若い力の可能性を見せてもらいました。
介護であれ他のビジネスであれ 次世代の「自分の携わる仕事に『希望』がそして『誇り』が欲しい」という声に応えるのは 団塊の世代以下われわれの最大の責務です。

2012年11月27日火曜日

日本を尊敬される国家に導く医療・介護

一昨日「全国在宅医療推進協会」の勉強会で武見敬三東海大学政治経済学部教授の講演を聞きました。
武見氏といえば 前参議院議員で元ニュースキャスター そしてなにより「ケンカ太郎」の異名をとった武見太郎元日本医師会長の子息として有名です。
この日の演題は「グローバル・ヘルスから見るわが国医療制度改革の系譜」で まさに政治学者として面目躍如といえる内容でした。国際社会において「わが国の保健医療が比較優位分野」であることは「すべての人々が」「受け入れ可能なコストで」「適切な医療サービスに」「アクセスできること」という2005年の Universal Coverage に関する WHO 総会決議によっても明らかだと述べました。
「"quality" "access" "cost"という3つの目標(評価基準)を同時に達成することは至難」という 先日のコラム「多職種に共通するプロトコルを」で触れた島崎謙治政策研究大学院大学教授の発言と裏腹の関係にあります。
さらに武見氏は「21世紀の国際政治において『経済大国から先導的成熟国家』としての役割を担うことが 地政学を越えた新しい外交・安全保障上のメリットを生む」と わが国の未来のあり方についても言及しました。
領土問題で揺れている日本が 軍事だけに頼らない国際社会での地位を確立する卓見だと感じました。
「わが国の医療・介護は アジアを中心に 官民一体でシステムを含めた輸出という新たなスキームを生み出すことで成長産業となり得るだけでなく 尊敬される国家という地位をもたらす」というに私の持論に大きな論拠を与えてもらったようで 意を強くしました。
ちなみに「ヤンキー先生」こと義家弘介参院議員が鞍替えして 衆議院神奈川16区から出馬するため 2007年の参院選で次点だった同氏は 繰り上げ当選を果たすことになりました。

2012年11月20日火曜日

多職種に共通するプロトコルを

17日土曜日に「医療介護福祉政策研究フォーラム」(虎ノ門フォーラム)の第1回シンポジウム「医療・介護の『2025年問題』を乗り切るために」に行ってきました。
代表理事は中村秀一内閣官房社会保障改革担当室長。厚生労働省老健局長や社会・援護局長を歴任し『2015年の高齢者介護』をまとめたことで名を残しました。
退官した後いったんは社会保険診療報酬支払基金の理事長に就任しましたが 再び最前線に返り咲いた敏腕行政マン(それだけに敵も少なくないでしょう)です。
入省当時の想いを初志貫徹している「公僕」の一人であることは 誰しも認めるところではないでしょうか。
わが国の医療・介護政策についてシンポジストの島崎謙治政策研究大学院大学教授は「"quality"(質の向上)・"access"(アクセスの確保)・"cost"(できるだけ低廉なコスト)という3つの目標(評価基準)を同時に達成することは至難。どれかひとつを犠牲にすることを選択せざるを得ない」と日本の医療の特長である「フリーアクセス」の見直しを示唆しました。
また地域包括ケアの鍵となる「医療と介護を横断したシームレスな連携」が進まない理由のひとつに「『インターフェース・ロス』の発生による情報やサービスの脱漏がある」と述べました。
もともと「インターフェス・ロス」とは 機種等が異なるために情報がうまく伝わらないことを意味する情報技術用語ですが 医療・介護の分野でも異なる組織・職種間で情報伝達が行われる場合には同様な現象が起きます。
医療職と介護職の間だけではなく 医師・看護師・保健師・ケアマネジャー・介護福祉士・ケースワーカーなどなど おのおのの職種間には職能・教育・思考方法に違いがあるためです。 
このギャップを埋めるのは簡単なことではありません。異なる職種同士の理解には 共通のプロトコル(相互に決められた約束事)や言語が必要です。
ICF(国際生活機能分類)などもそのひとつといえますが その普及には教育システムの整備が欠かせません。
『介護経営白書2012年度版"介護維新"現場からの介護人材教育改革』「特別座談会」堀田聰子独立行政法人労働政策研究・研修機構研究員が述べているように「職業プロファイルの見直しと資格プロファイルの整理による横断的な教育体系の再編」がなにより必要だと改めて感じました。

2012年11月19日月曜日

アーティストの技と魅力

週末荻窪音楽祭に出かけました。
今回で25回を数える市民が「住みやすい街」づくりをめざし生み出した素敵なイベントです。
街のそこかしこで手作り感にあふれた50弱のコンサートが4日間にわたり開催されました。
「(バリアフリーで)若者や高齢者も快適に過ごせ 子供達が明るく元気に育っていける街づくり」というコンセプトはまさに「地域づくり」の基本といえます。
とりわけ興味深かったのが「シャコンヌを聴け!!」です。
4人のアーティストがヴァイオリン・ピアノ・ギターでバッハの「シャコンヌ」(無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番)を弾き比べるというユニークな企画でした。
バッハの原曲がブラ―ムスやブゾーニの手にかかると 左手一本の簡素なもの・超絶技巧の華やかなピアノ曲に生まれ変わります(写真はピアニストのお二人)。
同じ曲を1回のコンサートで4回聴くというのは生まれて初めてですが 飽きるどころか音楽の奥深さに引き込まれたようになりました。
同じメニューでもアーティストのコンセプトや感性・技術によって 人に与える感動は千差万別です。
介護事業にも同じことがいえますね。
ケア・在宅・自立・地域…をどうとらえるか どう創造したいかによって できあがるサービスはまったく異なったものになるのでしょう。

2012年11月14日水曜日

プロフェッションでなければリスクは取れない!

先週末「在宅事業者が取り組む『住まい』サービス-地域包括ケアが求める介護事業者の使命」フォーラムを開きました。
10月31日のブログ「賃貸住宅事業は介護保険事業!?」にも書いたように「『餅は餅屋』という理にかなった事業行動をとっていくことを忘れないでほしい」というのがひとつの目的でした。
「介護事業者が『サ高住』をオーナーに立ててもらう場合 35年間一括借上げを保証するため経営者個人が連帯保証人として多額の債務保証をするケースもある。建設費(60室)4億円を25年借りると 銀行には月額200万円超の返済が必要。オーナー利回り7%保証という条件で介護事業者が35年間一括借上すれば月額230万円。それが35年では9億8千万円もの債務となる。1部屋の家賃を6万円と仮定すれば 80%の入居率でようやく黒字(290万円弱)になる」と株式会社やさしい手の香取幹社長はそのリスクの大きさを語ってくれました。
右の図の①~⑤のどこから収益を得るのかによって ビジネスそのものが変わってきます。
土地の所有者・建設者・住宅運営者・サービス提供者のそれぞれが専門性に基づいて 責任と成果を分担するスキームの構築が不可欠なのです。

2012年11月8日木曜日

一人で歩けば徘徊 みんなで歩けば地域防犯隊

私がかかわってきた「幼老共生型」の事業所がいよいよ竣工間近になりました。
東京都文京区駒込(4丁目35-15)にオープンする医療法人創健会(多湖光宗理事長)が運営する「文京ひかりの里」(認知症高齢者グループホーム3ユニット・事業所内保育所)です。
運営方針は「お年寄りの底力を生かそう」「子育てと仕事の両立支援」
2004年国際アルツハイマー病協会国際会議で奨励賞を受賞した多湖光宗院長は「病(気)」ではなく「人(間・生)」を看る特筆できる在宅医です。
これまでも三重県桑名市で 世代間交流を手法として高齢者ケアと次世代育成を融合・連携させることで「対費用効果」「ケアの質の向上」「高齢者の生きがいづくり」「教育的効果」など一石4鳥を狙う「幼老統合ケア」「能力活用セラピー」を実践してきました。
「一人で歩けば徘徊 みんなで歩けば地域防犯隊」というキャッチフレーズもその中から生まれたものです。
みなさんも ぜひ認知症ケアの最前線を実感してみてください。

2012年10月31日水曜日

賃貸住宅事業は介護保険事業!?

本日付の日本経済新聞(朝刊・東京・首都圏経済面)に「東建コーポ 在宅介護大手と提携 賃貸入居者向けに事業」という見出しを見つけました。
東建コーポレーションがジャパンケアサービスグループと提携し「サービス付き高齢者向け住宅」(サ高住)の入居者を対象にサービスを始めるというものです。
「11月1日に高齢者向け住宅開設/高松の社福法人」10/31四国新聞
「東京建物 サービス付き高齢者住宅第2弾 埼玉で86戸」10/17朝日新聞
「株式会社スミカ『高齢者住宅運営事業』をあらたにスタート」10/15産経新聞
「シルバーウッド、高齢者住宅に本格参入 サービス付きで」10/15 日本経済新聞
などなど同様の記事が目白押しです。
「サ高住」は 昨年の10月登録開始から 総登録件数2,422・総登録戸77,470(本日現在)と「今後10年間で60万戸」の計画達成は間違いないといわれるほど 急速に整備が進んでいます。
「在宅限界を高める」という地域包括ケアの理念に基づいて「施設」から「住まい」へという流れは当然ですが 施策の乗っかれば成功するという事業ではありません。
高齢者住宅の賃貸は「準市場の介護保険事業でなく自由市場の事業」だということを忘れてはなりません。
そのツケが顧客(利用者)に回って「施設より劣悪な『名ばかり住宅』に泣く泣く住まわされる」という事態が生じないことを願います。
そのためには事業者が「餅は餅屋」という自明の理を前提とした事業展開を行っていくことです。
そこで弊社では 11月10日(土)に「在宅事業者が取り組む『住まい』サービス-地域包括ケアが求める介護事業者の使命」と題したフォーラムを開催いたします。
在宅介護・医療に強い介護事業者・医療機関のみなさまの参加をお待ちしています。

2012年10月25日木曜日

急成長するリーダーがいない組織

4月に「日本でも在宅ケアのルネッサンスを」というブログを書きましたが 昨日・一昨日と オランダの"Buurtzorg"という在宅ケア組織についての講演とQ&Aセッションに参加しました。
今回来日したのは 代表で看護師のJos de Blokに加え ヘルスケアとICTの専門家Ard Leferink・家庭医のPatrick Rijkers・職業教育機関と連携した教育等の企画を担当する看護師Jennie Mastの4人(写真右から)です。
前回より深く"Buurtzorg"について学ぶことができた たいへん貴重な2日間でした。
さまざまな観点から注目すべき点は多々ありますが 組織論からいえば「組織全体が階層構造を採っていないフラットなセルフマネジメントチームであること」さらには「各チームにもリーダーはおらず 全看護師がリーダーシップを発揮することが期待されている」という点です。
堀田聰子さん(労働政策研究・研修機構 人材育成部門研究員)も 最初は理解が困難だったようです。
Josに「『中間管理職』大国の日本ではにわかには信じがたい」と質問したところ「マネジメント自体が日々進化している。メンバーを信じて任せることが大切だ」と答えてくれました。
スペシャリストとしての高度な専門性と意欲を基盤にした「新しいリーダシップ論」が生まれるかもしれないと感じたと同時に ぜひオランダへ行って現場をこの目で見てみたいという気持ちが強くなりました。

2012年10月9日火曜日

高齢者は「地方」で暮らせ!?

昨日(10/8)の日本経済新聞に「高齢者の地方移住促進 送り出す自治体が費用負担 厚労省検討」というタイトルの記事が掲載されました。
施設が足りない大都市のため 高齢者の地方移住を促す総合対策をつくり 地方には都市部の自治体が医療や生活保護の費用を負担したり 施設の整備費を出すなど財政支援の枠組みを整える。また大都市の医療インフラを地方で使えるようにする。
という内容です。
この施策に違和感を覚えるのは 私だけではないはずです。
一昔前に祖先帰りしたような感覚です。
上昌広・東京大学医科学研究所特任教授は「政府の意向で国民が移住する。まるでスターリン時代のようだ」
石川和男・社会保障経済研究所代表は「流通・物流など高齢者向けサービスを提供する体制論からするとイメージが湧かない。介護・医療の面からはどうだろうか」と tweet しています。
政府が掲げている「地域包括ケア」の推進と どう整合性をとるつもりなのでしょうか。

2012年8月31日金曜日

地域医療・在宅ケアを考える上映会&シンポジウム

26日の日曜日に佐久市で4月16日にこのブログでとりあげたドキュメンタリー「医(いや)す者として」の上映会&シンポジウムを行い 50名以上の参加を得て盛況のうちに終了しました。
映画の前半では 当時の常識からいえば破天荒といっても過言ではない「寒村地域への訪問巡回診療」「公開手術とその実況」「偏見と差別の対象だった脊椎カリエスの患者会の結成」などなど 若月俊一医師の「地域の民主化なくして医療の民主化はない」という信念と行動に感動を覚えます。
また映画の後半では 高度医療と地域医療の「二足のわらじ」の両立に苦悩する佐久総合病院や「農村医療こそ最先端の医療だ」という若月氏の衣鉢を継いだ医師の言葉に若月イズムの行く末を案じたり安堵したりします。
そしてシンポジウムでは 映画に出演した佐久総合病院の北澤彰浩医師の率直でかつ前向きな発言や地域医療・在宅ケアの最前線で活躍する古屋聡医師・菅原由美看護師の生々しい言葉が交わされ 当事者としての私たちの課題が見えてきました。
同様の上映会&シンポジウムを東京でも開催します(詳細はここから)。
 日時:9/2(日)13:30~
 会場TKPスター貸会議室 日本橋
 参加費:3,000円
ぜひ多くの方々にご参加いただき 一緒に考えていくことができれば幸いです。

2012年6月11日月曜日

いまある支え合い活かすコミュニティを

一昨日 キャンナス沼津(小風彩子代表)の主催で「地域包括ケアと訪問看護ステーションの重要性」というテーマのお話を三島市でしてきました。
こじんまりとした集まりでしたが 医療や介護の専門職だけでなく 一般の市民の方も参加してじっくり意見交換ができた有意義な会でした。
70代の男性は「日常的に不自由することはないが 体調を崩したときが問題。身近に看護師さんがいて実際的な手助けやアドバイスをしてくれることによって一人暮らしが続けられている」と実感のこもった体験談を披露してくれました。
自助・互助・共助・公助を統合し生活を支えていく「地域包括ケア」という仕組みを現実に動かしていくには 制度を横断し隙間を埋めていく存在が不可欠です。
新サービスを普及させるだけでなく いま現に機能している支え合いを専門職と市民が協働で担っていけるようなコミュニティづくりが大切だと改めて感じさせられました。

2012年6月7日木曜日

介護サービスの「顧客」満足を考える

昨日「地域包括ケア研究会」の座長を務めた田中滋慶應義塾大学教授の「地域包括ケアシステムの背景と将来展望」という講演を聞きました。
地域包括ケアシステムについて大きな示唆が得られたのはもちろんですが「顧客はだれか」という投げかけに納得がいきました。
社会保障制度のもとで「介護」を提供するのであれば 介護保険にまつわるステークホルダーの中でも「負担だけして給付を受けない大多数の理解が得られなければ 制度ビジネスは存続しえないというものです。
制度運営にあたる自治体だけでなくサービス提供事業者にとっても忘れてはいけない大切なポイントです。
であれば2025年に向けて 介護総費用は増えてはいきますが 今の倍以上必要な介護職員の1人あたりの平均給与が上昇するとは考えられず 高齢者人口は増えますが総人口は減っていく中で 負担だけが増していくという事態も想定されます。
このように 提供する側もされる側も閉塞感から抜け出せないという最悪のシナリオから抜け出すには介護サービスの生産性を向上させ「顧客」満足をアップさせていくことが欠かせないといえます。
それが可能になれば 田中教授も認めるように わが国の介護サービス(システム)が外貨を稼ぎ成長産業として国と自らの果実を富ませていくというシナリオが実現できるでしょう。

2012年5月17日木曜日

2極化する介護事業に克つノウハウ活用法

株式会社浜銀総合研究所が厚生労働省の2011年度の老人保健健康増進等事業で実施した「民間介護事業者における異業種企業からの知識移転による経営・サービスの質の向上に向けた調査研究事業」の報告書が公表されました。 経常利益について「赤字と回答した事業者が23.8%と最も多い。その一方 経営実調(平成23年度介護事業経営実態調査結果)で示されている収支差のように5%以上の利益を出しているところも25.6%あり 回答事業者により業績が2極化している」という実感を伴った分析結果を示すなど 参考となる知見が各所に見られます。 とりわけ目を引いたのは「法人外部の経営ノウハウを活用すると法人経営にプラスの関係性が生じる」という仮説の検証です。 結果的に仮説は証明され さらには「同業他社でのマネジメント経験」や「現在の法人でのマネジメント経験」などの外部の経営ノウハウの活用法の中で 特に経常利益率が黒字になる確率が高いものが「書籍・雑誌」と「コンサルタント等の活用」がという関係が導き出されています(表参照)。
私のような立場からすれば「当然」ともいえますが そんな自明の理にも気づいていない あるいは関心がない経営者が多いのも現実で それが「業績の2極化」の要因にもなっているのではとも推測されます。 ただし いただけなかったのが「介護は『社会福祉』であると65.8%が捉えており介 護は『ビジネス』であるの31.1%を大幅に上回った」という分析です。 設問の立て方が〈貴法人の介護事業の考え方についてより強くあてはまるのは「介護は『社会福祉』である」と「介護は『ビジネス』である」のはどちらか〉の2者選択というのが無理があるのはもちろんですが 設問自体がもうナンセンスといっても言い過ぎではないでしょう。 介護は「幸せ(福祉)を創造する営み(ビジネス)」なのですから。

2012年4月26日木曜日

住民が主役の地域包括ケア

一昨日・昨日と長野県の佐久市周辺に行き 満開の桜のもと 命の洗濯をさせてもらいました。写真はかの「ぴんころ地蔵」で有名な佐久市野沢の成田山の参道です。
用向きは 御代田町の社会福祉協議会で講演することと 一般社団法人地域ケア総合研究所(竹重俊文所長)の「笑福庵」(しょうふくあん)におじゃますることでした。 この庵は 古民家を活用したもので 近隣のみなさんとお茶を飲みながら「困りごと」や「老後の支え合い」などを気軽に話し合うたまり場(地域住民支え合いサロン)であったり 介護人材や経営者・地域文化の継承者を育成・確保するための泊まり込みのできる研修所(地域人材育成のための寺子屋)であったり…という多機能な地域サロンです。 住民が主役となる「ほんとうの地域包括ケア」のひとつとして大いに注目です。

2012年4月23日月曜日

ネットワークではなく縁(えにし)を

週末の土曜日 ジャーナリストで国際医療福祉大学大学院教授の大熊由紀子さんの主催する「『えにし』を結ぶ会」に参加しました。
元衆議院議員でかつ元受刑者の山本譲司さんの「刑務所が障害者や高齢者の福祉の代替施設になっている」という話や社会保障・税一体改革担当大臣を務めた与謝野馨衆議院議員の「増税反対論者の3つの嘘」など たくさんの興味深い話題に接することがでしました。 なにより「えにしを結ぶ」というタイトルそのままに 柴田範子さん秋山正子さんなど 活動には共感してはいても これまで面識がなかった方々と直接お話しする機会が持てたことが一番の収穫でした。 水下明美さんからは「介護支援専門員がかかえる課題が 現場ではどういう形で露呈しているか」というとても貴重なお話しを聞くことができました。 4/27の「どうなるケアマネジメント・どうするケアマネジャー~2012年介護報酬改定のあとにくるもの」フォーラムの参考にしたいと思います。 「ネットワークが大事だ」とよく言われますが ネットワークという「システム」が大切なのではなく「人とひとが意見や情報を交換し助けあえる関係」が必要だということを改めて実感じました。

2012年4月19日木曜日

ケアマネだけの問題じゃありません

昨日 4/27に開催するフォーラム「どうなるケアマネジメント・どうするケアマネジャー~2012年介護報酬改定のあとにくるもの」のシンポジストの4人(阿部崇菅原由美高岡里佳長谷川佳和)の方々と打ち合わせを行いました。
そのままシンポジウムとして みなさんに聞いていただきたいと思う話ばかりで大いに盛り上がりました。
ケアマネジメントの将来は ケアマネジャーだけでなく介護・医療事業を提供する者すべてに そして何より利用者やその家族にとって計り知れないほど大きな意味を持っています。
ここをしっかり考え 発言・行動していかなければ 豊かな高齢社会など夢物語です。
今日 シンポジストのお一人から「当日は ライブ感たっぷりのシンポジウムになりそうですね。ケアマネジャーの新たな未来に向けて 自分なりの発信ができるといいなと思いました」というメールをいただきました。
ご期待ください。

2012年4月16日月曜日

地域医療・在宅ケアを困難にしているもの

昨日「医(いや)す者として」という映画の試写会&トークイベントに行ってきました。
「若月賞」で有名な若月俊一氏と佐久総合病院のドキュメンタリーです。
映画の前半は 若き若月医師が赴任した時代と当時を知る人々の映像が中心で 貴重なアーカイブです。
ところが後半に入ると一転 歯切れが悪くなります。
現在の佐久総合病院そして地域医療(農村医療は死語?)・在宅医療の課題が語られますが 解決の方向性はもちろん その背景さえ一般の観客に伝えられることはありません。
それほど重い困難を背負っているのは若月医師の遺産を活かしきれない病院だけのなのでしょうか それともこの時代に生きる私たち全員なのでしょうか。
トークイベントは 作家の大野更紗・一橋大学大学院社会学研究科准教授の猪飼周平・佐久総合病院にも勤務する藤井博之の各氏です。
学生の参加者の「『地域の民主化なくして医療の民主化はない』という若月氏の言葉の意味が分からない」という発言に マルキシズムや運動・闘争といった言葉や実態が「歴史」になりつつあることを実感させられました。

2012年4月12日木曜日

日本でも在宅ケアのルネッサンスを

昨日「在宅ケアのルネッサンス」という講演会に参加しました。
在宅ケアの新たな提供モデルとして注目されているオランダの"Buurtzorg"という事業者の代表のJos.de.Blokが講師です。
Buurtzorgは看護師・介護士が最大12人で独立チームを形成し あらゆるタイプの利用者にトータルなケアを提供しています。
利用者満足度はオランダでNo.1。加えて従業員満足も非常に高く 昨年 全産業を対象とした最優秀雇用者賞を受賞しています。
効率性にも優れ コストは他の事業者の半分。2007年4人で創業。現在は約450のチーム・5,000人のナースと介護士を擁し 売上高は1億8,000万ユーロ。
オランダでもっとも急成長する組織として注目されています。
刺激的な話に触発されることが多々ありました。
もっとも印象に残ったのは 彼らが制度の後追いで活動を開始したのではないということです。
クライアントの利益にフォーカスし そこから最大のアウトカムを導き出すことに専念した結果が今の姿であり 国や世界中から注目されることになったのです。
「わが国とは違う」「日本ではできない」という言葉が言い訳にしか聞こえてきません。
在宅ケアに誠心誠意打ち込んでいる多くのナースたちには 大きな励ましになったと思います。

2012年4月9日月曜日

「3.11」を風化させない会を開催

昨日「グループホーム来夢
さんの10周年記念パーティーに出席しました。
会場は隅田川の屋形船です。
絶好の花見日和で桜とスカイツリーのマッチングも最高でした。
思えば 昨年の今頃は「花見の自粛」が話題になっていました。
そんな話題が過去のものになるのは結構ですが 震災と復興への関心が低下することが懸念されます。
そんな中「キャンナスを応援する春の会」が4月16日(月)19:00から原宿の東郷記念館で開催されます。
この会は 震災直後から今日まで延べ8,000人のナースを中心としたボランティアを続けている「全国訪問ボランティアナースの会キャンナス」の活動をまとめた『ドキュメント-ボランティアナースが綴る東日本大震災』(三省堂)の出版を記念するとともに 同会と被災地で活躍した看護師たちが貴重な体験を語り合い・学び合う「同窓会」を開催するための応援をするのが目的です。
「3.11」を風化させないためにも 一人でも多くの方々が参加されることを祈っています。

2012年3月23日金曜日

福祉・介護を支えるソーシャルワーカーにエール

昨日 東京都社会福祉協議会の生活相談員研修委員会(委員長:水野敬生江戸川光照苑長)全体会で 法改正・報酬改定と地域包括ケアをテーマに講演を行いました。
2年前にも同会で講演の機会がありましたが 昨日も同じように多くの生活相談員のみなさんが熱心に話を聞いてくれました。
今回は自分が話すだけでなく 最後まで会に参加して 東京家政学院大学人文学部人間福祉学科西口守教授の講演や委員会の今年度の研修成果も聞かせていただきました。
西口教授の「生活問題へのソーシャルワークの視座~地域包括ケアに相談員はどう向き合うのか」という講演は「地域包括ケア研究会報告書」をソーシャルワークの視点から批判的に論評したもので 久しく寡聞にして知ることのなかった「社会福祉」のプロフェッションから明確なメッセージを受け取ったという感慨を覚えました。
また なにより相談員のみなさんの真摯な取り組みとチームスピリットの豊かさを目の当たりにして大いにインスパイアされました。
「福祉・介護の先行きは決して捨てたもんじゃない」と明るい気持ちになりました。

2012年3月12日月曜日

ことばは少し乱暴なほうがいい

昨日・一昨日と上田市で開催された一般社団法人地域ケア研究所(竹重俊文所長)主催のシンポジウムに 講師・コーディネーターとして参加しました。
テーマは「地域で支える―報酬改正への対応」と「介護人材を育てる」で それぞれたいへん意義のある議論が交わされました。
埼玉県認知症高齢者グループホーム・小規模多機能協議会の西村美智代会長や長野県の行政担当者の方々はじめ多士済々のシンポジストとの出会いは貴重なものでした。
さらにうれしかったのは 諏訪市や長野市・高崎市から参加した若い介護職のみなさんと話ができたことです。
経済学者のケインズは
"Words ought to be a little wild, for they are the assaults of thoughts on the unthinking."「ことばは少し乱暴なほうがいい。なぜなら それは思考しない者を思考で襲うことになるから」
ということばを残しています。
私は「辛辣なことをいう講師だ」と思われているようですが ケインズ同様というとおこがましいのですが 少なくとも同じような覚悟で話をしているつもりです。
彼らが「思考し行動する介護職」として活躍してくれることを願っています。

2012年3月5日月曜日

報酬単価の意味の理解が明暗の分かれ道

昨日 日本介護経営学会の総会が行われあわせて記念シンポジウムが開催されました。
テーマは当然「介護報酬」ということになります。
田中滋日本介護経営学会・宮島俊彦厚生労働省老健局長に加え 木村隆次日本介護支援専門員協会会長・武久洋三日本慢性期医療協会会長・馬袋秀男民間介護事業推進委員会代表がシンポジストとしてディスカッションを行いました。
「ケアマネジャーの役割は残るのか」といった 専門職団体のトップにとってはいささか刺激的な議論も行われました。
私がもっとも印象に残ったのは「名称ではなく機能に応じた報酬設定」という論点です。
老健施設に対する在宅復帰支援機能の高い評価はもちろん 特養の新設多床室の報酬単価が引き下げられたこともその一環です。
であれば 訪問介護の生活援助の時間区分や通所介護の時間区分が変更されたのも同じ視点でとらえるべきだということです。
「基本サービス費が切り下げられた」という表面的な理解だけでは 次期以降の報酬改定の方向性や自社のとるべき戦略が見えなくなってしまう危険性があります。

2012年2月15日水曜日

「産業」という言葉さえ嫌悪される旧弊

政府の「新成長戦略」以来 医療や介護の「産業化」についてさまざまな議論が交わされています。
医療・介護が「『成長』産業足り得るか」については 賛否両論があることも理解できますが「産業か否か」についてはいうまでもないところです。
ところがTPPへの参加問題に絡めて「医療の産業化を許してはならない」的な論調が目立ってきているように思えます。
混合診療を進めるべきか否かについての議論は 簡単には決着がつくものではないでしょうが 医療が「産業であってはならない」という極論は 市場一辺倒の「原理主義」となんら変わりがないでしょう。
「皆保険下の現状から何らかの変化の先を意図して『医療の産業化』という言葉が使われ それが医療を市場に乗せる方向への変化を意味するのであれば支持しない」(平成23・24年度医療政策会議報告書)という立場の権丈善一慶應義塾大学商学部教授も「とはいえ…医療の平等消費社会を維持するために国家財政の持続可能生を犠牲にしなければならない場合には…消極的に受け容れざるを得ない状況になることはある…今の日本の財政状況の下 皆保険を堅持していくための安定財源を確保する見通しが立たないのであれば…診療報酬の引き上げも期待してはいけないと思う。…公共政策を論じる際には負担と給付をセットにして論じるしか方法はない」と述べています。
医療や介護の世界の「聖域」意識は 前向きな議論を阻む最大の壁としていまだに存在しています。

2012年2月7日火曜日

自ら結論を導き出すのがプロ経営者

鹿児島市で在宅医療に取り組んでいらっしゃる医師の中野一司さんの主催するメーリングリストで 安冨歩東京大学教授の「東大話法」なる概念を知りました。
「常に自らを傍観者の立場に置き 自分の論理の欠点は巧みにごまかしつつ 論争相手の弱点を徹底的に攻撃することで 明らかに間違った主張や学説をあたかも正しいものであるかのように装い さらにその主張を通すことを可能にしてしまう論争の技法であると同時にそれを支える思考方法のこと」だそうです。
さて先日(2/4)私の会社で「2012年報酬改定でどう変わる介護事業」というセミナーを開催しました。
毎回 参加者にはアンケートを実施し今後の参考にさせていただいています。とりわけ 不満な点やわかりにくかった点を正直に書いていただくことは 改善のための最高のヒントだと思っています。
今回のセミナーでは「資料が見にくい。あいまいな表現が多い。講師のビジョンを示せ」というご指摘をいただきました。
ありがたく受け止めはしますが 残念ながらもう一度同じセミナーを開催しても 同じ資料で同じお話をするしかありません。
私のセミナーの対象者は「経営者ないしは経営者を目指している方」が対象です。
そのような方にとって必要なのは「コンサルタント青木ならこうする」という現場を持たない傍観者の一般論ではなく「経営者である自分が自社の方針・戦略を立てる」ための道筋やロジックです。
ご意見をいただいた方は事務職のようですが 職種を問わず「考える」ことが不得手な若い人が増えているのかもしれません。
たしかに持論や自前の論理を持たない人には不満な内容だったと思います。常に「聞き手にどうすれば受け身ではなくポジティブに考えもらえるか」を意図しているため そういった反応が出てくるのも当然だと感じています。
以前「『暴論』を吐かないのがプロフェッション」 という記事を書きました。
プロフェッションの言説を通して 自らの方向性と結論を導き出すのがプロの経営者なのです。

2012年1月27日金曜日

被災地特例による看護師1人の開業が実現

昨年4月22日に公布された「東日本大震災に対処するための基準該当訪問看護の人員、設備及び運営に関する基準(平成23年厚生労働省令第53号)」を活用した 看護師による一人からの開業第1号が誕生しました。
1月23日付けで 福島県福島市の「特定非営利活動法人まごころサービス福島センター」(須田弘子理事長)が 市から「特定居宅介護サービス登録通知書」を受け取りました。
これまで この特例による基準該当訪問看護事業所申請は13市町村でが行われましたが 受理されたのは福島市だけです。
この原因は
① 被災地(特定被災区域)において
②「基準該当サービス」(市町村の裁量)で
③「期間限定」(2012年2月29日までの間)
というきわめて限定的な条件が課せられたためだと考えられます。
とりわけ ②の「基準該当サービス」であることが最大のネックです。
判断を委ねられることとなった市町村は「震災対応で行政の手が回らない」こと さらには前例主義の悪しき慣習で「今までどこもやったことのないことは行わない」などといった理由によって受理がままならなかったのです。
また このケースでもサービス開始が2月1日で 特例期間は29日間しか残っていません。
ともあれ 現在約5万5千人が避難生活をしている福島市で認められた意義は小さくはありません。
一人でも多くの方がこのサービスを利用して 厳しい被災地での生活の一助になってくれることを願います。

2012年1月13日金曜日

介護報酬単価1月25日に公表

第88回社会保障審議会介護給付費分科会が 予定通り 1月25日に開催されることになりました。
同日 小宮山洋子厚生労働大臣から社会保障審議会長に対して「平成24年度介護報酬改定に係る諮問」がなされ 同分科会で介護報酬改定案が示され了承された後 即日「答申」が行われることになります。
表面的には1.2%プラス改定とされていますが 介護報酬で2.0%程度に相当する「介護職員等処遇改善交付金」が廃止されるため実質的に介護報酬は0.8%程度のマイナス改定といえます。
みなさまそれぞれ個別単価が気になると思われますが ここで発表される報酬単価の解説・分析は 2月4日(土)「2012年報酬改定でどう変わる介護事業 ‐医療介護の連携強化・地域包括ケア・処遇改善は実現するか」セミナーでどこよりも早く実施します。
報酬単価の後追いだけでは 事業の継続性(going concern)は担保できません。
2025年を見据えた事業戦略の羅針盤をお示しするつもりです。

2012年1月5日木曜日

イノベーションの実行者は「民」

3日付の日本経済新聞によると 枝野幸男経済産業大臣は同社とのインタビューで「子育て」「医療・介護」「省エネルギー」の3分野で新産業を創出するため 今月中に召集される通常国会に「課題対応型事業の促進法案を提出する」と表明しました。
また昨年11月に枝野大臣が国家戦略会議に提出した資料には「近年の日本経済は 企業の生み出す付加価値の低迷・雇用環境の悪化と労働所得の低下・将来不安の増大と勤労世帯の予備的貯蓄の増大・国内消費の低迷・デフレによる投資の低迷という いわば縮小均衡が継続する『やせ我慢』の経済であった」と分析し これを「『イノベーションと需要の好循環』により『価値創造』による拡大均衡経済への転換を図る」という方針を打ち出しています。
支援対象となる新産業には「医療機関と民間企業が連携した高齢者向けの健康維持サービス」「都市部の24時間保育サービス」「介護ロボットの開発」などが想定されています。
法律ができたからといって 一挙にこれらの産業化が進むものではないでしょう。
なにより求められるのは事業者の意思です。
イノベーションを提唱した経済学者シュンペーターは その実行者のことをアントレプレナー(entrepreneur:企業者)と呼んだのです。
活力ある社会を生み出すのはお上ではなく 私たち民間の力です。