2010年10月27日水曜日

「24時間地域巡回型訪問サービス」の概要

昨日「24時間地域巡回型訪問サービスのあり方検討会」の中間取りまとめが公表されました。
また 本日付の読売新聞では「利用者の自己負担割合を高所得者に限って引き上げること」「ケアマネジメントに利用者負担を導入すること」を検討という報道がなされました。いずれも 明日の介護保険部会で報告・検討がなされます。
中間取りまとめのポイントは次の通りです。
【サービスの対象者像】
○主に要介護3以上の要介護者の在宅生活を維持することを前提するが サービスの対象者は要介護者全般
【訪問サービスのマネジメント】
○事業所がサービス提供のタイミングや回数等を決定する訪問サービスマネジメントを行う
事業所とケアマネジャーは「共同マネジメント」の形で緊密な連携を図り 利用者のニーズに即したプランを作成
【介護と看護の一体的提供】
○事業所に介護職員と看護職員を配置する または外部事業所との緊密な連携を図り介護サービスと看護サービスを一体的に提供できる体制を検討
【随時対応のための体制】
○オペレーターは看護や介護に関する基礎知識と経験を有する者が担当し 看護職員が不在時でも 看護の専門知識を有する職員からの助言が常に得られるような体制を確保
【職員の配置のあり方】
事業所の職員が他の介護サービスとの兼務等について柔軟に対応できる仕組みが必要
○夜間においては 他の24時間対応の介護サービス事業所または施設等との兼務も検討
【サービス提供圏域】
○30分以内で駆けつけられる範囲
一定規模の地域を単一の事業所が担当するエリア担当方式や地域内の他事業所への部分的な委託も含めた柔軟な提供体制の構築を検討
【報酬体系】
○時間単位制に基づく出来高方式ではなく 一定の範囲内で包括定額方式を採用
○包括化するサービス範囲について検討するとともに 他のサービスとのバランスも考慮

2010年10月19日火曜日

生活困窮者支援から雇用・地域経済活性化を!

本日 台東区のNPO法人自立支援センターふるさとの会(代表理事:佐久間裕章氏)を訪問しました。
同会は 1990年にホームレス支援のボランティアサークルとしてスタート。その後 路上生活者などの生活困窮層を主な支援対象者とし 宿泊所の設置運営による住居保障や地域生活へ移行した後のアフターケアさらには稼動年齢層への仕事づくりなどを行っています。
現在は 関連8法人で従業員186名 事業規模はおよそ7億1千万円(2009年度)に上ります。
昨年度「支援付き住宅研究会」を立ち上げ 厚生労働省記者クラブで「高齢の生活困窮者が安心して生きていける『支援付き住宅』の緊急提言」も行っています。
支援付き住宅というのは 生活保護費で払える入居費で 職員が24時間常駐し 食事や生活支援に加え 介護保険サービスや在宅医療も活用する施設です。
同会の支援付き住宅は コストを抑えるために 古い旅館を買い取って活用したり地域の民家を改装するなどの工夫を施しています。
佐久間代表理事は「生活困窮者や高齢者の問題は『まちづくり』の視点がいないと解決しない。民間資本を活用すれば雇用開発や地域経済への波及効果も小さくない」と話してくれました。
ここにも 制度のはざまの社会問題を "Warm heart & Cool Head" で克服しようとしている仲間がいます。

2010年10月15日金曜日

新厚労相は官僚の味方?

今日の日本経済新聞に「週末出勤や報告義務『長妻ルール』形骸化」という記事がありました。
「厚生労働省で長妻昭前厚労相が命じた省内ルールをなし崩し的にやめる動きが進んでいる。政務三役が週末に大量の職員を登庁させることがなくなったほか 職員が政治家と接触したことなどを大臣に報告するルールの厳守も緩んでいる。省内からは『官僚主導が完全に復活した』(厚労省幹部)との声もでている。… 『厚労省改革』を訴えて乗り込んできた長妻氏が去り 官僚が前面に出て動き始めた。政治主導の後退なのか 長妻氏の空回りだったのか。細川氏の手腕が問われる」
というものです。
これまでマスコミには 長妻昭前厚労相は最も評判の悪い大臣の一人として名前が上がっていました。
7/29付の同紙でも「『政務三役らと信頼関係ない』厚労省若手職員が苦言」というタイトルで「長妻昭厚生労働相が28日に開いた若手職員による省内改革案の報告会で さまざまな改革案とともに政務三役らへの苦言もあがった」としています。
しかし 本当に長妻氏はダメ大臣だったのでしょうか。
細川新大臣が辞めるころには「官僚のいいなり大臣」というレッテルが貼られているかもしれません。
二枚舌(?)のマスコミ報道ではなく事実を見つめないと 誤った評価を下してしまいます。

2010年10月12日火曜日

不当な指導・ローカルルールに従わされる事業者

10・11日とNPO在宅ケアを支える診療所・市民全国ネットワーク主催の「第16回全国の集いin名古屋2010」が開催され 私も参加しました。
11日には 私もメンバーとなっている「医療福祉法務研究会」の会員によるシンポジウム『納得できない行政指導・ローカルルール』が開かれました。
事業者ならだれでもぶつかる 自治体による誤った指導やローカルルールにどう対応するかがテーマでした。
介護保険法における基準等の解釈の部分については 国がすべて統一して運用するのではなく 都道府県あるいは保険者ごとに裁量権が認められています。これがいわゆるローカルルールとなっています。
私は こうしたローカルルールの存在そのものを問題視しているのではありません。地域における保険者の裁量権が認められないとすれば 介護保険制度の「市町村中心主義」の意義が失われてしまうからです。
問題は 裁量権を超えたあるいは法令を無視したローカルルールが存在する点にあります。


この日も 訪問介護の散歩動向や生活援助の問題 介護タクシーをはじめとする移動サービスの自治体ごとの差異などがパネリストから指摘がありました。
会場からも「訪問介護の院内介助でヘルパーが座っている時間はサービス提供時間に含めない」と指導され 報酬返還を余儀なくされた事例などが報告されました。
「しっぺ返し」を恐れて 不当な指導に従わざるを得ない事業者の弱い立場が浮き彫りになりました。

2010年10月6日水曜日

ポピュリズムを排するのは「民」の成熟度

今朝「タイ・バンコクなどの非常事態宣言を3カ月延長」という新聞の見出し(日経朝刊)が目に入りました。
記事は「タイ政府は5日 首都バンコクとノンタブリ・パトゥムタニ・サムトプラカーンの周辺3県に発令中の非常事態宣言を来年初めまで3カ月間再延長することを決めた。7日に期限を迎えるのに伴う措置。バンコクは爆発事件などが依然頻発。5日夕にもノンタブリ県で起きた爆発で約10人が死傷するなど 治安は再び悪化している」と報じています。

私が 先月初め"CTOP"という JICAとタイ国保健省のモデル事業で 老人ホームや在宅高齢者宅を訪れたのがノンタブリ県でした(右写真)。 
現地の人はこの春の混乱について「日本の『軍事暴動』という報道は過剰」と話していましたが 心配になる記事です。
当地での タクシン派と反タクシン派(アピシット首相)の対立には根深いものがあります。
医療サービスについても 2002年にタクシン政権が「30バーツ政策」を打ち出した後 06年9月のスラユット革命政権が「無料」に改革。また現アピシット政権は「高齢者全員に月額500バーツの手当」に加え これまで無償だった「保健ボランティアに月額600バーツの手当」を支給するなど バラマキ合戦の様相を呈しています。
日本でも同様に「子ども手当」「高速道路無料化」など 選挙目当ての政治現象が起きています。 
同じ今日の日経新聞(地球回覧)には「政治の迷走は日本も深刻だが 少なくとも聞こえのいい政策に受益者の有権者から疑問と批判の声が上がるような成熟度がタイにはない」とありました。