2013年11月20日水曜日

感度が鈍い介護事業者

昨日「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律案」通称「プログラム法案」が衆議院本会議で可決されました。
このプログラム法案は「社会保障制度改革国民会議」の報告書を受け 社会保障4分野(少子化・医療・介護・年金)の改革のスケジュールを定たものですが 5日間・延べ25時間というわずかな審議で採決に至りました。
この法案は単に「いつ法案を提出するか」という工程を定めただけではなく 改革すべきアイテムが明示されています。
介護保険分野でいえば 2015年度から「一定上の所得の者の2割負担」「要支援者のサービスの市町村事業への移行」はこれで決定したことになります。
したがって これからの社会保障審議会介護保険部会のとりまとめは「線引き」がどこになるのかがその中心になるといえます。
にもかかわらず 介護保険関係者の反応は鈍いといっても過言ではありません。
「具体的な改革は 来年の通常国会以降に提出される個別法案が成立しないと実現しない」という報道や説明を鵜のみにしているのでしょうか。
あるいは「あきらめ」の心境なのでしょうか。
自らが「制度ビジネス」「国策マーケット」で事業を行っているという自覚が乏しすぎるようです。
法改正が成ってから「反対」を声高に叫ぶという旧来のスタイルは通用しません。
国民や社会に理解される「提言」を積極的に発信するという転換が一日でも早く必要です。

2013年11月7日木曜日

個性を格差と言い換えるな

昨日 田村憲久厚生労働大臣は 大衆薬のインターネット販売で 市販直後の薬は対面の発売から最長3年・ネット販売を禁じる販売の新しいルールを適用する方針を明らかにしました。
薬のインターネット販売は「規制改革の象徴」ともいわれていましたが「後退」のイメージはぬぐえません。
大田弘子政策研究大学院大学教授は5日付けの日本経済新聞で「規制改革を阻むものは さまざまな衣をまとった『それぞれの事情』である。…『それぞれの事情』のなかでもっとも強いのは『競争したくない』という事業者側の意識だろう。競争がないほど楽なことはないから 競争を避けたいがゆえの抵抗は非常に強い」(経済教室「競争避ける意識との戦い」)と述べています。
8月30日付のブログでも書いたように 役所・行政を隠れ蓑にした最大の「抵抗勢力」は事業者自身です。
社会保障審議会介護保険部会における議論でも抵抗勢力は金科玉条のように「格差」を論拠に改革を否定します。
全国一律が求められるのはナショナルミニマムの観点です。
それを超えるサービスレベルの違いは「格差」ではなく「個性」であり「独自性」です。
この視点が欠けていては「事業(者)栄えて国(民)滅ぶ」ことになってしまうでしょう。

2013年8月30日金曜日

誰がじゃましているのか!?

今朝の日本経済新聞に「規制改革『押す』より『引っ張る』」というタイトルで 次のようなコラムが掲載されていました。
「規制改革会議が努力を続けているが 遅々として進んでいないようだ。…なぜだろう。根因は 規制国家・日本のお国柄そのものにあるのではないか。…医療も農業も 業界を競争にさらせば消費者に弊害が及ぶという論理が立ちはだかる。競争を排除して非効率を温存する気風が根強い。…規制を批判する民間も実は 規制を歓迎する文化が染みついている」(大機小機)
まさに介護「保険」ビジネスにかかわる多くの事業者・団体に共通する旧弊です。
最近 ある介護経営誌の座談会でサービス業大手の創業者が「他者の参入を防ぐため業界内で囲い込みしている『民々規制』のようだ。業者間だけで通用する言葉ではなく 利用者にわかる言葉で話す開かれた業界にしていく自助努力が必要」という趣旨の発言をされました。
小さな既得権にしがみつき うまくいかなければ「制度が悪い」「国が悪い」で済ませていませんか。
社会や国民・顧客のニーズを先取りして 新商品やサービスを創造することが民間事業者の使命です。

2013年6月10日月曜日

女はつらいよ!?

6/8土曜日 日本経済新聞朝刊の「記者手帳」に 宮城5区選出の自民党衆議院議員・大久保三代さんのことが「新人議員のイシバ症候群」というタイトルで取り上げられていました。
新人議員の大久保さんは 6/4付のブログで 石破茂幹事長が夏の参院選に向けて所属衆院議員に課した「参院選候補と並んだ『2連ポスター』を地元に1,000枚張れ」というノルマに「胃が痛い。ストレス性イシバ症候群だわ。説教されたからってポスターは1枚も増えないのに」とつぶやきました。
大久保さんは 子育ての合間を縫い自身でも張っていますが まだ100枚。幹事長に呼び出されるとの噂を耳にして 心情を吐露しました。
大久保さんは ブログは随所で「家庭と仕事」や「子育てと政治活動」の両立の困難さを訴えています。
しかし 彼女は単に弱音を吐いているだけではありません。
別の日のブログでは「年齢も性別も経験も関係ないのが政治の世界。問われるのは『これまでの生き方』『これからの覚悟』だけなのです」と宣言しています。
これまでの日本の「少子化対策」「子育て支援」がお世辞も効果があったといえないのは「女性の新しい生き方や働き方」を旧態依然のオジサマ政治家や官僚が全くといいていいほど理解できていなかっかたらだと感じています。
大久保さん がんばって!

2013年5月27日月曜日

5/26シンポジストの方に質問させていただきます

昨日 ドクターズ・デモンストレーションシンポジウム「日本の医療・福祉の危機とゆくえ~参議院選挙へむけて政策を問う」に参加してきました。
ここ10数年支持政党がなくなり いわゆる「無党派層」化した自分自身の投票行動につながる話を聞きたいと 個人的には期待していました。
残念ながら その期待はかないませんでした。
各シンポジストのプレゼンそのものが期待外れだったわけではありません。
新鮮な意見や「またか」とうんざりする主張などなど たいへん参考になりました。
せっかく各党の国会議員に参加してもらったのであれば 主催者にはタイトル通り「政策を問う」ていただきたかったのです。
あるいは 特定のシンポジストや主催者の主張を投げかけるより 参加者からの(意見ではなく)質問を受けたほうが どれほど有意義だったかと感じました。
せっかくですので このブログで参加された議員の方に質問をさせていただきたいと思います。
できればこのブログ上にご回答を寄せていただければ幸いです。
よろしくお願いします。
【質問】
いまわが国の社会保障とりわけ医療保険制度や介護保険制度を「国民・市民のために」持続可能とするためには できる限り「シンプル」にすべきだと考えています。
「低所得者対策」は欠かすことはできませんが それを保険制度の中に組み込むと 複雑化するばかりでなく 特定の既得権者の利益保護や利益誘導につながります。低所得者対策は個別制度ではなく「スティグマ」を払拭しながら 社会福祉や社会保障という上の次元で解決すべきだと考えていますがいかがでしょうか?
このシンポジウムでも「日本のため・社会のため・国民のため」といいながら その実 自らの利益に固執する業界・職能団体の主張が目につきました。
介護保険制度で一つ例を挙げるならば「補足給付」をなくすことです。
医療保険制度でいえば 直接の低所得者対策からは離れますが 皆保険を守るための方策の一つが「現状」の「フリーアクセス」を変えることです。
一部の団体は「フリーアクセスはわが国の『国民皆保険』の優れた点で守るべき」といいながら 国民の利益ではなく自分たちの利益を守りたいからではないか と思えてなりません。
たとえば生活圏域(医療圏)内ではアクセスフリーとするが それを越えれば保険外とするなど 保険制度を守りつつ市民に不利益を与えない方法はあるはずです。優先すべきは「専門性のある家庭医」の育成ではないかと考えます。
以上です。

2013年5月22日水曜日

特養のレゾンデートルを明らかに

15日のブログ「社会福祉法人制度にメスが?!」で書いたように「久しく手つかずの状況にあった社会福祉法人改革」がいよいよ本格的に着手されるようです。
昨日の社会保障審議会介護給付費分科会の介護事業経営調査委員会(委員長:田中滋慶応大学大学院教授)で「特別養護老人ホームの内部留保」について報告・審議が行われました。
1施設あたりの「実在内部留保=内部資金の蓄積額のうち現在事業体が未使用の状態で保持している額」は1億5563万円「発生源内部留保=内部留保の源泉で捉えた『貸借対照表の貸し方に計上されている内部資金』」は3億1373万円と報告されました。
内部留保の多寡の判定では「実在内部留保が多い」と判定された特養は約3割 「少ない」とされたのものは約5割でした。
「特養の内部留保をめぐる議論は『埋蔵金論争』として今後社福法人全体に広がる可能性がある」(5月22日付日本経済新聞)という報道もありますが 施設ごとにバラツキもあるため この調査結果だけをもって「特養は『溜め込みすぎ』だ」と決めつけるのは短絡的すぎるでしょう。
それよりも大切なことは 社会福祉法人としての「レゾンデートル:raison d'être(存在意義)」を明らかにすること 言い換えれば「役割」「機能」と「展望」を 市民や地域に積極的にアピールすることができるか否かにあります。

2013年5月21日火曜日

「地域包括ケア」を否定する政府?!

昨年「高齢者は「地方」で暮らせ!?」というブログを書きましたが いよいよ昨日から「都市部の高齢化対策に関する検討会」の審議が始まりました。
各紙の報道は「『これから都市部で生じる爆発的な介護需要の増加にどう対応するか。待ったなしだ。』原勝則老健局長は検討会で述べた」(朝日新聞)など「大本営発表」的な色彩を強く感じます。
「日本版のCCRCを提言」
「要介護状態になってからでは難しい。退職した時点からの転入が望ましい」
など委員の発言を聞いても すでにわが国では受け入れられなったコンセプトの蒸し返しにしか思えません。
なにより昨年も書いたように 政府方針の「地域包括ケア」を自ら否定してとどう整合性をとるつもりなのでしょうか。 

2013年5月15日水曜日

社会福祉法人制度にメスが?!

13日付の「日本経済新聞」は「政府 病院再編へ新型法人を検討 地域ごとに一体経営」という見出しで報道をしています。
明日の「経済財政諮問会議」(議長・安倍晋三首相)で「医療法人同士の合併や権利の移転をしやすくなるよう医療法人制度の規制緩和を進めるべきだ」との提言が行われるという内容です。
これは社会福祉法人にとって 決して「対岸の火事」ではありません。
「社会保障制度改革国民会議」の議論でも
○医療法人制度及び社会福祉法人制度については 新しいまちづくりを促進する仕組みの構築が必要であり 具体的には、医療法人制度(及び社会福祉法人制度)の経営統合を促進する制度 医療法人(及び社会福祉法人)の「非営利性」を担保しつつ都市再開発に参加できるようにする制度 ヘルスケアも含むコンパクトシティに対する資金調達手段を促進する制度など総合的な規制の見直しが必要。
社会福祉法人こそ 経営の合理化・近代化が必要。大規模化や複数法人の連携を推進。加えて社会福祉法人非課税扱いとされているに相応しい 国家や地域への貢献が求められるべき。低所得者の住まいや生活支援などに積極的に取り組むべき。
とされているのです。
日経の報道は この政府方針に基づいたものです。
となれば 次に来るのは 間違いなく 久しく手つかずの状況にあった社会福祉法人改革ということです。

2013年4月30日火曜日

偏見と誤解を乗り越えて

27日の土曜日 恒例の大熊由紀子さん(国際医療福祉大学大学院教授・ジャーナリスト)の主催する「『えにし』を結ぶ会」に参加しました。
第3部「日本も、本格的な認知症の国家戦略を!!!」では 冒頭 佐藤雅彦さん(1954 年生まれ)と中村成信さん(1950年生まれ)のお二人の若年認知症の当事者が軽妙なトークを繰り広げました。
ご覧になれば 認知症に対する誤解と偏見が一挙に解消するはずです。
明るく元気に生活しているお二人ですが 認知症という診断が下ったときは立ち直れないかと思うほどのショックを受けたと語ってくれました。
中村さんの場合は スーパーで万引きした疑いで逮捕されたことがきっかけでした。自分ではお金を払わずに商品を持ち出した覚えがなく「これは冤罪だ」と繰り返しました。起訴は見送られましたが 事件後懲戒免職になりました。
そのお二人が異口同音に話したのは「できないことを悩むのではなく できることに希望を見出す」ことです。
障害や病気・年齢などの差や有無にかかわらず「お互いに声を掛け合う社会」「有用性だけを尺度にせず すべての人が等しく尊い存在であると認める社会」こそが 希望と活力を生み出してくれるでしょう。

2013年4月8日月曜日

「聖域」なき議論に期待

以前このブログで「島崎謙治政策研究大学院大学教授が医療の『フリーアクセス』について見直しを言及した」という話題を取り上げました。
学者や保険者が「フリーアクセス」の見直しを主張することは ある意味必然ではありますが ついに医療界自身からもこの問題を議論の俎上に上げようという意見が出てきました。
発端は「第6回社会保障制度改革国民会議」(3月13日開催)において 大島伸一国立長寿医療研究センター総長が「医療は相当部分壊れかかっている」としたうえで「フリーアクセスの問題を避けて通ることはできない」と発言したことです。
同日の会議でも複数の委員から賛意を示す発言が見られました。
さらには 27日開かれた第7回の同会議では「四病院団体協議会」(四病協)が「地域ごとの需要に応じた専門医の上限を設定するマンパワー規制・自由開業規制も必要」という認識を示しました。
いくらすばらしい政策や制度も 時代とともにその存在意義や形態が変化するのは当然です。
「『聖域』を設けないで議論すること」「既得権に恋々としないこと」が 活力ある社会を生み出す原動力です。

2013年2月5日火曜日

心を打つ先駆者のエール

日曜日に「『駐在型訪問看護ステーション構想』Part2~わがまちに訪問看護ステーションを!」フォーラムに行ってきました。
「地域包括ケアの理念となっている『だれでもが望み通り住み慣れた街で最期まで住み続けることができるようにする』ための鍵となる訪問看護師=地域看護師をどう増やしていくか」がテーマです。
シンポジウムには 被災地特例を活用して一人で訪問看護ステーションを立ち上げた一関市・南相馬市・石巻市の3人の看護師が顔をそろえ 熱のこもった現地の活動を伝えてくれました。
専門家・有識者の代表として 樋口恵子高齢社会をよくする女性の会代表・山崎摩耶前衆議院議員・佐藤美穂子訪問看護財団常務理事・藤本康二前経済産業省ヘルスケア産業課長が登壇し 3名のナースにエールを送るとともに 今年3月で終了する被災地特例の延長と人員基準そのものの見直しを訴えました。
また会場には「開業ナース」の草分けで 昨年フローレンス・ナイチンゲール記章を受章した在宅看護研究センターLLP代表の村松静子さんもいらっしゃいました。
30年間 周囲の無理解も意に介さず しゃにむに利用者・患者のために打ち込んできたからこそ「よくぞここまで」という感慨と同時に「まだようやくこれだけ」という不全感という矛盾した感情抱いていることを吐露してくれました。
彼女の歩んだ茨の路を想うと 激励の言葉の一つひとつが かけがえのない重みを持ったたものとして 会場の参加者すべての心を打ったように感じました。
とかく「総論賛成・各論反対」で遅々として進まない市民本位の規制改革ですが なんとかして動かせないかという思いがつのりました。

2013年1月15日火曜日

薬ネット販売解禁を「他山の石」に

最高裁第2小法廷(竹内行夫裁判長)は11日インターネットなどによる医薬品の通信販売を禁止している厚生労働省令を「薬事法の趣旨に適合せず 違法で無効だ」とする判決を下しました。
厚労省は2009年6月に施行された改正薬事法の改正で 大衆薬を副作用のリスクが高い順に第1類から第3類医薬品に分類し 第1類医薬品と第2類医薬品について「店舗で対面で販売させなければならない」とネット販売を原則禁止していました。
判決は「旧薬事法で認められていたネット販売の禁止が 職業活動の自由を相当程度 制約するのは明らか」ともしています。
患者・消費者目線に立てば「対面販売でないと安全性を担保できない」という論理は いかにも時代遅れ。
「薬局へ行きたくともいけない人がいる」という事実から目をそらし ネット販売が危険であるかのような主張を繰り返し 既得権を守ることだけに執着していた業界団体には猛省を促したいと思います。
本気で経済再生を目指すなら 株価や金融政策よりも このような国民・市民をないがしろにした「内輪のなれあい的規制」を緩和し 企業活動を活性化させることが本筋なのは当然でしょう。
実際に アマゾンなどネット企業やセブン&アイ・ホールディングスなどの流通大手に加え これまで通販に反対してきたドラッグストア業界でもネット販売への参入が進むものとみられています。
薬のネット販売に限らず 日本と日本人の活力を束縛している無用な規制やしがらみは まだまだ多く残っています。
新政権が「前政権の否定」に固執して せっかく進んだ改革まで元に戻してしまうようでは 政治不信がさらに増大するだけでなく 2025年を乗り切ることなど到底できないでしょう。