2010年12月13日月曜日

この国の将来に希望を抱かせる学生たち

昨日「ISFJ(日本政策学生会議)政策フォーラム2010」の介護分科会にゲストとして招かれ 慶応義塾大学日吉キャンパスに行ってきました。
「ISFJ(日本政策学生会議)」というのは 学生の提言で未来を創ることをめざして1994年に設立された非営利の政策シンクタンクです。
毎年12月に 政策担当者を招いて「政策フォーラム」を開催し 参加学生が半年かけて作成した政策提言論文の発表および政策提言の場を提供しています。
昨年は 全国26大学57研究室が研究発表を行い 527名ものの学生参加しています。
今年度創設された介護分科会では
・慶應義塾大学 樋口美雄研究会「介護サービス供給不足解決に向けて」
・日本大学 宮里尚三研究会「介護福祉士に関する研究」
・日本大学 豊福建太研究会「介護保険財政の地域格差是正に向けた政策提言」
・関西大学 林宏昭研究会「介護事業の持続的発展を目指して」
・立教大学 高原明生研究会 国際分科会「介護分野における外国人労働者の受け入れ」
の研究発表が行われました。
これらの発表を聞いて講評し評価することを依頼されました。
テーマのほとんどは「介護人材不足対策」に関するものでした。
評価を云々するまえに 学生たちが「介護に興味を持って研究し政策提言を行う」という事実自体が すばらしいことだと感じさせてくれました。
こういう若者たちが どんどん多くなってくれれば「介護や社会保障 さらにはこの国のあり方を 既成概念にとらわれず議論し その実現に向けたアクションがはじまる」という期待を抱かせます。

2010年12月9日木曜日

これが「政治主導」なのか!?

主要各紙がこぞって報道しているように 昨日の民主党の作業部会で 介護保険制度改革の「提言案」が示されました。
これによると
①高齢者が在宅サービスを受けるときに必要な介護計画の作成費を無料から有料に切り替える
②介護の必要が少ない高齢者の利用者負担を1割から2割に引き上げる
という社会保障審議会介護保険部会の意見書に反対し「行わない」と言明しています。
反対論者ならば「もろ手を挙げて賛成」といいたいところですが 本当にそれでいいのでしょうか。
一方 同日「社会保障改革に関する有識者検討会」(座長:宮本太郎北海道大学大学院法学研究科教授)は「政府・与党社会保障改革検討本部」(本部長:菅直人首相)に提出する報告書を取りまとめました。
この日取りまとめた報告書は「非公開」でした。
会合後の記者会見で事務局は 財源について「消費税を基幹的な役割を担うものとして重視した」と述べています。
介護保険部会での議論は「民主党」政府が閣議決定した「pay as you go原則」と「消費税を上げない」という「民主党」のマニフェストに束縛されて 前述の2点のような方向性を打ち出したはずです。
ところが「民主党」自体が この結論を否定したのです。
「政治決断」だといってしまえばそれまでですが では この間の議論は一体なんだったのでしょうか。

2010年12月8日水曜日

明日は介護保険法の誕生日

13年前の明日12月9日は 介護保険法が成立した日です。
2000年4月の法施行時の総理大臣が小渕恵三氏だったことなど 多くのみなさんは もうお忘れのことでしょう。
この10年間の制度の歩みを総括する書籍の発行やシンポジウムの開催はさかんですが 明日につながる前向きな議論はこれからが正念場です。
しかし 内閣府の「障がい者制度改革推進会議」中でも 先の社会保障審議会介護保険部会の取りまとめや12月3日の改正障害者自立支援法の成立について 委員から批判が相次いでいます。
介護保険部会の意見書に「介護保険の被保険者範囲として若年障害者への言及」があることに対し「統合も選択肢にあるのか」という委員の質問に対する厚生労働省の担当者の回答は「現行の介護保険との統合を前提にするスタンスにない」というものでした。
「介護の普遍化」や「社会化」といった介護保険の崇高な理念は いったいどこへ行ってしまったのでしょうか。
政も官も そして民も 自らの目先の利益や既得権の保守に汲々としているようでは この国に明るい未来など見えてくるはずはありません。

2010年11月22日月曜日

「暴論」を吐かないのがプロフェッション

民主党政府の閣僚による「放言」「失言」が相次いでいます。
何よりも言葉を武器にするはずの政治の専門家の質の低下は 目を覆うばかりです。
プロフェッションは「乱暴な」物言いや考え方をしないものです。
領土問題や国際関係における日本の立場を強化するために 安直に「核武装」を口にする人間は 外交や軍事のプロとはいえません。
介護や社会福祉の実務家や専門家にも そういった傾向が見えるのは残念で仕方がありません。
「介護サービス情報の公表」についての一部の暴論も その例です。
現状の仕組みが 本来の理念や目的にかなったものではないというのは私もそう思います。
この制度の最大の欠点は 利用者の選択に資するものとしながら 使い勝手の悪いものになっているという点です。
これはわが国の行政システムの欠陥が生み出したものだという見解にも 同意します。
しかしだからと言って この制度が「一部の利権を肥え太らせるための装置でしかない」という意見には組するものではありません。
小山秀夫兵庫県立大学大学院経営研究科医療マネジメント専攻教授は 研究論文『介護老人保健施設および慢性期医療機関におけるコンプライアンス経営体制と情報公表制度についての認識との関連』(介護経営第5巻第1号/日本介護経営学会)において「介護老人保健施設ならびに慢性期医療機関の双方おいて コンプライアンス経営といった場合に意識して取り組んでいる内容として最も多いのは 医療法もしくは介護保険法等の法令遵守であり 次いで利用者の権利擁護であった。情報公表制度がコンプライアンスの向上に役立つと考えている場合 コンプライアンス経営体制を推進している傾向があり サービスの質の向上や労務環境の改善に取り組んでいる意識が高かった」という報告をしています。
続けて同論文は「コンプライアンス経営体制構築の自律的な取り組みを促すには 情報公表制度等の利便性向上を図り 活用が推進されることが重要と考えられる」としています。
この見解が正しいかどうかも含めて 専門家同士のていねいな考察と議論が交わされる土壌が生まれなければ 介護事業やサービスは成熟したものとはならないでしょう。

2010年11月15日月曜日

在宅が変われば施設も変わる

12日「介護保険部会・地域包括ケア研究会の読み方-2012年 あなたの事業はどう変わる!?」というタイトルの連続セミナーの第1回を開催しました
この日は「地域包括ケア研究会」報告書の意図を丹念に説明しました。
経営者のみなさんは全員 大きな危機感を抱いて参加されています。
話が進むにつれ「心臓が縮む思いだった」と漏らした方もいらっしゃいます。
それほど これから明らかになる介護保険制度改革はパラダイムシフトを伴う大改革だということです。
実際 この報告書には 2025年には「介護保険施設」は「在宅復帰に向けて生活期のリハビリテーションを集中的に受ける必要がある者のために リハビリテーションスタッフが重点配置された施設」で「病院と住まいの中間施設として位置づけられている…こうした機能を持たない従来型の介護保険施設は『ケアが組み合わされた集合住宅』として位置づけられている」「施設を一元化して最終的には住宅として位置づけ 必要なサービスを外部からも提供する仕組みとすべきである」といった「過激」ともいえる表現があふれています。
当然 施設経営者からは大きな反発が生まれています。
一方 川合秀治全国老人保健施設協会会長は この報告書を受けて導入が検討されている「24時間地域巡回型訪問サービス」について 老健の将来を決定するものとしたうえで「われわれの本来の使命の一つである地域支援に踏み出したい」と述べています。
批判や抵抗だけで保身できる時代は もう過去のものです。
「いいとこどり」ではない 真の「変革」ができる組織だけが 次代を担うことができるのです。

2010年11月8日月曜日

福祉を「人的資源投資」ととらえた改革を

11月5日付の日本経済新聞に「『市場』と『福祉』の改革両立を」というタイトルで 渡辺聰子上智大学教授の論文が掲載されました。
渡辺教授は「従来の日本は市場主義も福祉改革も不十分」「福祉を『人的資源投資』ととらえ改革進めよ」と 主張します。
日本にとっては 市場主義改革の必要性も福祉改革の必要性も欧米におけるよりもずっと大きく 英国のように「自由放任の市場主義」と「行き過ぎた福祉国家」の両方を交互に経験する暇はない と述べています。
そこで 欧州型の社民主義でも市場主義でもない福祉制度改革を実現するための基盤になるのが「ポジティブウェルフェア(積極的福祉)」であるといいます。
これは 福祉を個人や組織の自立を助ける建設的・積極的な「人的資源投資」としてとらえる考え方のことで 特に「可能性の再配分」をもたらす教育の役割は重要としています。
まさに わが意を得たりという論旨です。
わが国の歩む道は「経済再生を果たし 健全な福祉制度を発展させる」しかないのです。

2010年10月27日水曜日

「24時間地域巡回型訪問サービス」の概要

昨日「24時間地域巡回型訪問サービスのあり方検討会」の中間取りまとめが公表されました。
また 本日付の読売新聞では「利用者の自己負担割合を高所得者に限って引き上げること」「ケアマネジメントに利用者負担を導入すること」を検討という報道がなされました。いずれも 明日の介護保険部会で報告・検討がなされます。
中間取りまとめのポイントは次の通りです。
【サービスの対象者像】
○主に要介護3以上の要介護者の在宅生活を維持することを前提するが サービスの対象者は要介護者全般
【訪問サービスのマネジメント】
○事業所がサービス提供のタイミングや回数等を決定する訪問サービスマネジメントを行う
事業所とケアマネジャーは「共同マネジメント」の形で緊密な連携を図り 利用者のニーズに即したプランを作成
【介護と看護の一体的提供】
○事業所に介護職員と看護職員を配置する または外部事業所との緊密な連携を図り介護サービスと看護サービスを一体的に提供できる体制を検討
【随時対応のための体制】
○オペレーターは看護や介護に関する基礎知識と経験を有する者が担当し 看護職員が不在時でも 看護の専門知識を有する職員からの助言が常に得られるような体制を確保
【職員の配置のあり方】
事業所の職員が他の介護サービスとの兼務等について柔軟に対応できる仕組みが必要
○夜間においては 他の24時間対応の介護サービス事業所または施設等との兼務も検討
【サービス提供圏域】
○30分以内で駆けつけられる範囲
一定規模の地域を単一の事業所が担当するエリア担当方式や地域内の他事業所への部分的な委託も含めた柔軟な提供体制の構築を検討
【報酬体系】
○時間単位制に基づく出来高方式ではなく 一定の範囲内で包括定額方式を採用
○包括化するサービス範囲について検討するとともに 他のサービスとのバランスも考慮