2009年12月3日木曜日

経済的理由で4割が有料老人ホームに入居できず

日本政策投資銀行は「民間病院の経営環境と高齢化社会へ向けた対応」と題したレポートで 2035年の介護施設利用者は 2008年時点に比べて約136万人増加すると見込んでいます。
同レポートによると 介護施設の利用者は 2035年にかけてすべての都道府県で増加が見込まれますが 介護保険3施設は 財政的な制約により 今後大幅に増加することは想定しづらいと指摘しています。
そこで 施設需要への対応としては 有料老人ホームなどの増加が期待されますが このうち39.8%の人が 経済的な問題から 有料老人ホームへの入居が困難となる可能性があるとしています。
平均的な有料老人ホームの利用者負担月額(19万円)が 介護保険3施設(平均6万9000円)と比べて高額だということが理由です。
昨日のブログに書いた療養病床の問題もそうですが 在宅誘導のためには「住」が最も大きな解決課題のひとつです。
政府には わかりづらい高齢者住宅施策の整理を速やかに望みます。
一方 事業者にとっては ニーズに対応したサービス提供が 大きなビジネスチャンスとなります。

2009年12月2日水曜日

マニフェストと国民の利益の関係

日本慢性期医療協会は11月27日 毎日新聞の社説「療養病床削減計画を実行せよ」(11月23日)に対して意見表明を行いました。
社説は 長妻昭厚生労働大臣が 民主党がマニフェストに掲げた「療養病床の削減計画の凍結」を改めて表明したことに関して「脱社会的入院の観点から理解できない」とするものです。
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20091123k0000m070110000c.html
これに対し同協会は「療養病床」についての社説には 一部に誤解と偏見があるとしたうえで
○ 2006年7月から導入となった医療区分により 急性期病院の人工呼吸器患者や重度の後遺症の患者など長期入院患者の入院が増え「社会的入院の温床」とは呼べない状況になっている
○ 最近の療養病床には 生死を境とする重度患者が多く 一般病床にも療養病床にも慢性期の医療が必要な患者が増えてきている
○ 膨大な数の疾病を抱えた高齢者への対応は 在宅サービスだけでは限界があり 療養病床数を増床させない政策のままであれば 社会的要請にとても応えられない
と訴えています。
http://jamcf.jp/chairman091126.html
「マニフェスト至上主義」は妥当なのか 在宅中心のサービス提供体制への道筋はどうつけるのか そして国民の受益と負担の観点から もう一度 議論を行うべきです。

2009年11月30日月曜日

眠っている人的資産を活かす

昨日の日本経済新聞の「歌壇」に
「公園の草取り仕事に精をだす水車を作る技持ちながら」
という入選作がありました。
介護や生活支援の分野でも 看護師・ヘルパー・保母などの有資格者の掘り起しが叫ばれています。
退職や子育てのために 潜在能力を活かせない人的資産は 質・量とも相当のものであると推測されます。
少子高齢社会が活力のある豊かなものであるためには 見逃せない視点です。
そのためには 既得権にがんじがらめになっていたり 既存の制度の枠にとらわれていてはいけません。
「地域を核」に「顔の見える人間関係を再構築する」新しい試みを許容する土壌が必要です。
「なぜ 介護支援専門員は介護保険サービスを組み込まないと報酬が発生しないのか」
「なぜ 国家資格を保有している看護師が一人で開業できないのか」
素朴な疑問を改革につなげていきましょう。

2009年11月27日金曜日

「事業仕分け」は政治ショー!?

25日に行政刷新会議の事業仕分けのワーキンググループの討議を傍聴しました。経済産業省が予算要求しているあるプロジェクトに弊社が関与しているからです。
メディアにも連日取り上げられることもあって 国民の関心も高く 予算決定のプロセスを可視化するというもくろみは成功といってもいいでしょう。
しかし わずかな時間で事業の意義を理解し 判断を下すというのは乱暴すぎます。
ノーベル賞受賞者らが抗議の声明を発したように「はじめに削減ありき」の政治的パフォーマンスといわれても仕方がありません。
国益の観点から 仕組みの見直しを強く願います。

2009年11月25日水曜日

プロの仕事

先週 東京都が主催する「福祉保健を考えるセミナー」が「もっと知ろう!福祉サービス第三者評価 調べてみよう!それぞれのサービス」というテーマで開催されました。私も「福祉サービス第三者評価の活用~それぞれの立場から~」というパネルディスカッションに 福祉サービス第三者評価者の立場で パネリストとして参加しました。
ディスカッションは 2か所の特養の実際の評価結果を比較するという形で進められました。双方とも たいへん優れた取り組みを行っている施設で 評価結果も上々です。しかし 評価の内容 特に講評(コメント)を詳細に比べてみると 大きな違いがあります。
たとえば「移動の支援」という項目についてみると 一方のコメントは
「入所時に作成される『施設利用者個人台帳』や担当ケアマネージャーによるアセスメントシートに、在宅での移動方法について詳細に記載され、入所後にも安楽・安全に移動して頂けるよう活用している。それに基づいて機能訓練指導員を中心とした各専門職が連携を取り、利用者の身体状況の変化に応じて本人や家族と共に相談・検討し日々の支援に反映している」
というのに対し もう一方のコメントは
良い姿勢が保たれるように理学療法士が確認して、利用者の状況に合った車椅子を用意している。また、車椅子のクッション、離床センサー等の福祉用具についてもミーティング時に検討し、適切なものを選択・導入している。歩行介助においてもリハビリを意識した移動を心掛け、身体状況によっては2人で介助する体制を整えたり、準職員に対する研修や用具の定期点検を実施して、移動時の安全確保に努めている」
と記述されています。
明らかに 後者の講評のほうが「具体的で明確だ」と お分かりになるでしょう。
これが評価者の力量の差です。「プロの仕事か否か」は 如実に表われるものです。

2009年11月20日金曜日

親の介護に対する支出は親からもらった額の半分!?

電通が 高齢の親を持つ45~64歳の人を対象にした「親の高齢化・介護に関する意識調査」結果を発表しました。
今年9月に 高齢の親を持つ全国800人に インターネットで行ったもので「親に介護が必要になったとき心配なこと」という問に対しては「経済的負担が増える」「どれだけ費用がかかるか不明」と経済的な要素を心配する声が 特に男性に多く(56.5%)みられました。
さらに 全体の54%が「親に介護が必要になったとき自分が頼られる」と覚悟はしているものの「負担してもよい」と考えている出費は「月額2万円くらいまで」という結果でした。
月2万円では なんとか要介護2の1割負担がまかなえる程度でしかありません。
一方 同じく9月に 財団法人家計経済研究所が実施した「消費生活に関するパネル調査」では「子ども夫婦に対する親からの経済的援助の有無」についてたずねています。
結果は「妻の親から援助を受けている割合」は11.1%で「夫の親から援助を受けている割合」は14.6%でした。また「妻の親からの平均援助額」は一か月当たり34,200 円 「夫の親からの平均援助額」は一か月当たり44,600 円です。
子どもに4万円援助しても その半分しか助けてもらえない というのが悲しい現実です。

2009年11月9日月曜日

一人ケアマネは質が低い!?

先日 日本在宅介護協会(在宅協)東京支部セミナー「事業者としてのケアマネジャーの連携」に参加しました。そのシンポジウムの中で 興味深いやりとりがありました。
まず 日本介護支援専門員協会会長の木村隆次氏が「居宅介護支援事業所は複数で できれば特定事業所加算が取得できる3名以上のケアマネジャー(プラス事務職)で運営すべき」という持論を展開しました。
これに対して 立教大学教授の服部万里子氏は「居宅介護支援事業所は地域と密接な関係にあり 大規模化がすべてにおいて優先するというのはおかしい。一人ケアマネだから質が低いということはなく 専門性こそが大切だ」と反論しました。
この点に関しては 私は服部氏に賛成です。
服部氏はまた「居宅介護支援事業所は 星の数ほどあっていい」とも述べました。
利用者本位の介護・医療サービスを実現しようと思うなら「日本中に星降るように」居宅介護支援事業所と訪問看護ステーションを誕生させるべきではないでしょうか。