2011年3月3日木曜日

規制仕分け「看護師1人からの開業」の是非を議論

3月6・7日の両日 行政刷新会議の「規制仕分け」が開催されます。
政府は規制改革を「新たな成長の起爆剤」と位置づけ 行政刷新会議で検討を進めてきました。
「規制仕分け」は 国の規制や制度の是非を公開で議論するという政府・行政刷新会議の目玉施策です。
見直しを検討すべき規制・制度として8分野・約250項目が洗い出されていましたが 先日環境・農業・医療の3分野を柱に重点12項目が選定されました。
「EV(電気自動車)向けの急速充電器の設置基準緩和」や「一般用医薬品のネット販売規制の緩和」とならんで「看護師1人からの開業」が選定されました。
常勤で2.5人の看護師を置く必要がある訪問看護ステーションの人員基準を緩和し 看護師1人からでも開業できるようにすれば 訪問看護サービスの供給不足解消の切り札になると考えられたためです。
「住み慣れた地域や自宅で最期まで生活し続けたい」という市民の希望は「地域包括ケア」の基本でもあります。
改革サイドの参考人には 看護師の開業基準緩和を訴え続けてきた菅原由美全国訪問ボランティアナースの会キャンナス代表/開業看護師を育てる会理事長が選ばれました。
6日の日曜日10:30~12:00に東京都品川区のTOCビル13Fでの実施が決定しています。
インターネットライブ中継も予定されています[詳細は規制仕分けHP http://www.shiwake.go.jp/ ]。
「パフォーマンス倒れ」と揶揄されないよう「外部性」と「公開性」という本旨にのっとり 開かれた議論が展開されることを望みます。

2011年2月17日木曜日

医療と介護 医師と療養者(利用者)をつなぐ専門家に期待

2月16日の中央社会保険医療協議会(中医協)の総会で 2012年度診療報酬と介護報酬の同時改定に向け「小規模薬局による在宅での薬剤師業務を進めるための医療保険上の対応」などが論点として提示されました。
「在宅患者訪問薬剤管理指導料」(薬局の薬剤師が医師からの指示で在宅患者に服薬指導などを行った際に算定)は 全国の薬局の7割強が届け出ているものの実際に算定したのは1割に満たないと 厚生労働省は報告しています。
このほか「訪問薬剤管理指導が診療・介護報酬で評価されない高齢者向け住宅・施設の入所者に対する薬剤管理指導の評価」「医師から指示を受ける前に介護支援専門員からの情報提供などによって薬剤師が訪問した場合の診療報酬上の評価」の在り方が論点として挙げられました。
たまたま この前日の15日に埼玉県薬剤師会坂越支部で講演を行い「薬剤師は 在宅介護・療養を担う専門家として ぜひ地域や在宅に足を運んでほしい」という話をしたばかりでした。
熊谷慎一同支部長のお話でも「店舗の外に目を向ける調剤薬局はごくわずか。ましてや在宅に関わっている薬剤師は例外といっていいほど」ということでした。
中医協では「薬局の7割弱が薬剤師数3人未満(常勤換算)の小規模経営で 在宅への対応には薬局業務の空いた時間を充てたり 薬局を閉じて対応したりするケースが多い」との報告がなされていますが だからこそ地域や在宅での活動が期待されます。
薬剤師会坂越支部の会場でも「報酬算定のあるなしを考える前に行動を」という提言がなされましたが まさにそのとおり。
医療と介護をつなぐ専門家の絶対的な不足が叫ばれているいまこそ ぜひアクションを起こしていただきたいと思います。

2011年1月26日水曜日

福祉・介護職より始めよ

埼玉県狭山市の長谷川佳和氏は 私が信頼し尊敬する介護支援専門員の一人です。
氏は 10年近くの長きにわたって自治会長を務め 精力的に地域活動に取り組んでいます。
福祉や医療の世界では「地域」を「支える」あるいは「再生する」という「言葉」は日常的に語られていますが 従事者自身が 自らの地域に対して積極的に活動を行っているという例は 氏以外には寡聞にして ほとんど聞いたことがありません。
それどころか「『社会貢献』しているので『免罪符』を与えられている」と勘違いしている人物が多いのが現実ではないでしょうか。
「隗より始めよ」の故事のとおり まず自らが一市民として地域にかかわり 課題を発見・整理し 改善に向けて 小さくてもよいから歩みを始めることが大切だと感じています。
長谷川さんたちの活動は 市民の発議による議員定数の削減
http://www.tokyo-np.co.jp/article/saitama/20110103/CK2011010302000040.htmlという成果を生み出しています。

2011年1月5日水曜日

新しい時代のリーダーを養成します

あけましておめでとうございます。
日本経済新聞は年明けから「三度目の奇跡」というテーマで特集を連載しています。
過去の2度の奇跡とは 明治維新と戦後をさしており 衰退一途をたどる今の日本にはモデルも目標もないが ここでも奇跡を起こすための鍵がないわけではない。それは「外で作って稼ぎ 内でより高度なものや価値を創る」ことだと続けています。
しかし これを阻む厚い壁は「人材」だとしています。
これは介護の業界にもあてはまります。
人材の重要性は あらためて述べるまでもありませんが その大切な人材を育成するために 業界や事業者がどれだけ有効な手を打てているかといえば とても満足とはいえない状況です。
昨年12月30日の日本経済新聞で 金井壽宏神戸大学教授は「危機から『超回復』するにはリーダーの体系的育成が欠かせない。新たなリーダーシップの連鎖を世代継承性の名のもとに生み出していくことが肝要である」と述べています。
リーダーやリーダーシップは「資質」だけに左右されるもではありません。
「カリスマ」とい名の「ワンマン」が今の時代やこの業界で求められているリーダー像ではないのです。
このような要請に応えるために 私たちも1月から「介護福祉MBA講座」を開設し 介護福祉事業経営のプロフェッショナルを養成します。
これからのリーダーをめざすみなさんに受講をおすすめします。

2010年12月13日月曜日

この国の将来に希望を抱かせる学生たち

昨日「ISFJ(日本政策学生会議)政策フォーラム2010」の介護分科会にゲストとして招かれ 慶応義塾大学日吉キャンパスに行ってきました。
「ISFJ(日本政策学生会議)」というのは 学生の提言で未来を創ることをめざして1994年に設立された非営利の政策シンクタンクです。
毎年12月に 政策担当者を招いて「政策フォーラム」を開催し 参加学生が半年かけて作成した政策提言論文の発表および政策提言の場を提供しています。
昨年は 全国26大学57研究室が研究発表を行い 527名ものの学生参加しています。
今年度創設された介護分科会では
・慶應義塾大学 樋口美雄研究会「介護サービス供給不足解決に向けて」
・日本大学 宮里尚三研究会「介護福祉士に関する研究」
・日本大学 豊福建太研究会「介護保険財政の地域格差是正に向けた政策提言」
・関西大学 林宏昭研究会「介護事業の持続的発展を目指して」
・立教大学 高原明生研究会 国際分科会「介護分野における外国人労働者の受け入れ」
の研究発表が行われました。
これらの発表を聞いて講評し評価することを依頼されました。
テーマのほとんどは「介護人材不足対策」に関するものでした。
評価を云々するまえに 学生たちが「介護に興味を持って研究し政策提言を行う」という事実自体が すばらしいことだと感じさせてくれました。
こういう若者たちが どんどん多くなってくれれば「介護や社会保障 さらにはこの国のあり方を 既成概念にとらわれず議論し その実現に向けたアクションがはじまる」という期待を抱かせます。

2010年12月9日木曜日

これが「政治主導」なのか!?

主要各紙がこぞって報道しているように 昨日の民主党の作業部会で 介護保険制度改革の「提言案」が示されました。
これによると
①高齢者が在宅サービスを受けるときに必要な介護計画の作成費を無料から有料に切り替える
②介護の必要が少ない高齢者の利用者負担を1割から2割に引き上げる
という社会保障審議会介護保険部会の意見書に反対し「行わない」と言明しています。
反対論者ならば「もろ手を挙げて賛成」といいたいところですが 本当にそれでいいのでしょうか。
一方 同日「社会保障改革に関する有識者検討会」(座長:宮本太郎北海道大学大学院法学研究科教授)は「政府・与党社会保障改革検討本部」(本部長:菅直人首相)に提出する報告書を取りまとめました。
この日取りまとめた報告書は「非公開」でした。
会合後の記者会見で事務局は 財源について「消費税を基幹的な役割を担うものとして重視した」と述べています。
介護保険部会での議論は「民主党」政府が閣議決定した「pay as you go原則」と「消費税を上げない」という「民主党」のマニフェストに束縛されて 前述の2点のような方向性を打ち出したはずです。
ところが「民主党」自体が この結論を否定したのです。
「政治決断」だといってしまえばそれまでですが では この間の議論は一体なんだったのでしょうか。

2010年12月8日水曜日

明日は介護保険法の誕生日

13年前の明日12月9日は 介護保険法が成立した日です。
2000年4月の法施行時の総理大臣が小渕恵三氏だったことなど 多くのみなさんは もうお忘れのことでしょう。
この10年間の制度の歩みを総括する書籍の発行やシンポジウムの開催はさかんですが 明日につながる前向きな議論はこれからが正念場です。
しかし 内閣府の「障がい者制度改革推進会議」中でも 先の社会保障審議会介護保険部会の取りまとめや12月3日の改正障害者自立支援法の成立について 委員から批判が相次いでいます。
介護保険部会の意見書に「介護保険の被保険者範囲として若年障害者への言及」があることに対し「統合も選択肢にあるのか」という委員の質問に対する厚生労働省の担当者の回答は「現行の介護保険との統合を前提にするスタンスにない」というものでした。
「介護の普遍化」や「社会化」といった介護保険の崇高な理念は いったいどこへ行ってしまったのでしょうか。
政も官も そして民も 自らの目先の利益や既得権の保守に汲々としているようでは この国に明るい未来など見えてくるはずはありません。