2011年6月3日金曜日

正直者がバカを見ない改革を

昨日 内閣不信任案の採決をめぐる茶番劇の陰で「社会保障改革に関する集中検討会議」の社会保障改革原案が公表されました。
遅まきながら 年金・医療・介護・子育ての一体改革が途に就いたことになります。
詳しい論評は 会員向けレポ-トや別の媒体で行いますが「『正直者がバカを見る』仕組みにだけは設計してほしくない」というのが偽らざる感想です。
これだけでピンときた方も多いと思いますが サラリーマンの妻を対象とした「運用3号」問題についてです。
厚生年金に加入しているサラリーマンの夫が退職した場合 扶養されていた妻は 国民年金の第3号被保険者から国民年金の第1号被保険者への変更手続きをし 国民年金保険料をも納めなければなりません。
ところが この手続きを市町村の窓口ですることを忘れていた人に対し 厚生労働省は第3号被保険者のまま取り扱うという事務取扱いを示しました。
これによって 真面目に法令上の届出義務を果たしてきた人や法令に従って記録を訂正して無年金・低年金となった人々は何ら救済されず 故意・過失あるいは無関心・不作為によって届出義務を果たさなかった人間だけが救われるという奇妙な状況が生まれたのです。
この運用は 前厚生労働大臣が指示したということなのですが 誰がなんと言おうと理不尽です。
今必要なのは 大向こう受けするパフォーマンス(施策)ではありません。
前に進んでいくためには避けられない痛み(負担)を伴う改革が不可欠ならば 為政者はそれを明らかにし 国民に信を問うべきときなのです。

2011年5月12日木曜日

介護保険法改正案反対の真の狙いは?

自民党厚生労働部会は 現在衆議院に上程された介護保険法等改正案について反対の意向をしましました。
同部会の田村憲久部会長が 昨日記者団に語った反対理由は「介護サービスの情報公表制度の見直しと社会医療法人の特別養護老人ホーム運営への参入」の2点で「修正などがなければ(法案に)反対せざるを得ない」との考えを示しました。
介護サービスの情報公表制度の見直しについては「(事業者の)負担軽減には指導監査や第三者評価と共通する調査項目の一元化が重要」(中村博彦参院議員)「(改正案では)制度が介護サービスの質を担保していることが十分に考慮されていない。もっと課題を整理して(改正案を)つくるべき」(西田昌司参院議員)とする意見が出たようです。
部会長が「厚労省は 手数料の金額は介護報酬に含まれていると説明してきたが 制度を見直したら介護報酬は下がるのか」と質問したところ 厚労省の担当者からは明確な回答がなかったとしています。
この点などは 制度導入当時の厚労省のスタンスを知る者にとっては 思わずニヤリとするところで 正論といえます。
しかし他の議員からは 今回の見直しは「事業者の負担軽減につながる」と評価する意見も出たようです。
また「情報公表制度の見直しは」今回の改正法案の本丸ではないことも確かです。
にもかかわず 法案そのものに反対する意向を示しているという点に ある狙いが透けて見えます。
「利益誘導と政局の陰」を感じる人間は少なくないはずです。

2011年4月18日月曜日

有事に弱いジャーナリズム

一昨日(4/16)NPO日本医学ジャーナリスト協会が主催する「大地震でジャーナリスト・医療者はどう動いたか―被災地からのレポート」という緊急公開シンポジウムに行ってきました。
医師・歯科医師・看護師といった医療関係者とジャーナリストが現地からの報告を行いました。
ここで感じたのは「この国の多くが 平時のルール・システムや感覚で 大震災という有事を戦っているのだ」ということ。「平和ボケ」といってしまえば身も蓋もありませんが ズレているのです。
救助や医療・介護の現場のことではありまあせん。
阪神・淡路大震災以来 現場レベルの緊急対応は 格段に進んできました。ボランティアでもそうです。
ところが 国や自治体そして職能団体の組織をつかさどる文官たちはズレまくっています。
ジャーナリストもまったく同じです。
今回のシンポジウムでも 結論を出せとはいいませんが「秋に再度開催します」というアナウンスだけで終わってはジャーナリズムの機能自体が疑われます。
課題や疑惑を白日の下にさらし 国家の軌道を修正させるだけの力がジャーナリズムにはあるはずです。
政争をあおるだけではなく ペンの力で意義ある提言を発信してください。

2011年4月13日水曜日

この期に及んで…

さきほど開催された第72回社会保障審議会介護給付費分科会において 厚生労働大臣から諮問された「被災地における訪問看護ステーションの看護師の一人開業を基準該当居宅サービスとして認める特例措置」について諮問のとおり了承する旨の結論が得られました。
特例基準の内容は
○東日本大震災に際し災害救助法が適用された市町村においては 基準該当居宅サービスとして訪問看護ステーションの人員基準を常勤(保健師・看護師・准看護師)で1以上とする
○この措置は 2011年3月11日から2012年2月29日までの間で厚生労働大臣が定める日までとする
というものです。
多くの人は長期化する被災地でのケアへの対処としては 至極まっとうな措置だと感じるはずです。
ところが あろうことか給付費分科会では 医師系の3団体と看護協会が反対を表明したのです。
この日の会合では 冒頭に被災地と被災者のために黙禱をささげ 各団体からの被災地(者)支援の報告も行われ 未曾有の震災に一致して応じていこうという了解がなされたはずです。
にもかかわらず「24時間一人で対応できるのか」「安定的は供給につながらない」など 相も変わらず2.5人の人員基準を死守しようとするかたくなな反対論。賛成論を述べたのは この日で退任する石川良一・全国市長会介護保険対策特別委員会委員長(稲城市長)ただ1人でした。
前回のブログでも述べたように 既得権を守ることにしか目が向かないようでは この国には復興などおぼつきません。

2011年4月8日金曜日

震災を理由に思考停止するな

昨日のキャリアブレインニュース https://www.cabrain.net/news/article/newsId/33537.html によると「四病院団体協議会は 2012年度に予定されている診療・介護報酬の同時改定の延期を要請する方向で検討を始める」といいます。
「同時改定のための財源について 東日本大震災からの復興のための財源確保が最優先となる中 十分な財源を得るのは難しいと見込まれるため」としています。
私には この意味が分かりません。
復興のための財源確保は喫緊の課題ですが 報酬改定を遅らせれば財源確保ができるのでしょうか。
本音は「財源確保のために自分たちの報酬に手をつけないでほしいという」という利己的なものだというのは うがちすぎな見方でしょうか。
同じく昨日開催された「社会保障改革に関する集中検討会議」の準備会合で土居丈朗慶應義塾大学教授が示した「震災復興と社会保障の強化と財政健全化の同時達成は実現可能。震災復興期に社会保障を充実させることで被災者支援にもなる。震災復興と同時並行で社会保障と税の一体改革を実行すべき」という見解のほうがしっくりきます。
震災からの復興には 衆知を集め 強い意思で未来のために考え抜くしかありません。
たとえ その結論が自らの利益に反しようとも。

2011年3月13日日曜日

できることを身近なところから

東京でも まだ余震が続いています。
未曾有の震災といえます。17年前大阪で「阪神・淡路大震災」に遭ったことを思い出しています。
アメリカのメディアも 日本だからこそ これだけの被害で済んでいる というエールを送ってくれています。
そんな今だから 福祉・介護・医療に携わるみなさんの力が必要です。
なにも 被災地へ入ることだけが求められているわけではありません。
職場はもちろんですが みなさんの周りに援助が必要な人がたくさんいるはずです。
ぜひ 近所の人やお知り合いの人・出会った人などなど 身近な場所や近くの方へのケア・援助をお願いします。
地域とそれを支える人の力が いま必要です。

2011年3月7日月曜日

規制仕分け「看護師1人からの開業」を認める

昨日実施された「規制仕分け」において検討された「訪問看護ステーション開業の規制緩和」は「一定の要件の下で看護師1人からでも開業できるように規制を緩和すべきだ」という結論となりました。
9名の仕分け人(評価者)中8名が 現在の訪問看護ステーションの開業要件である2.5人の人員基準を見直すよう求めました。
厚生労働省は 現行基準の設置理由について「サービスの安全性・安定性の担保」と「小規模事業者の収益性の低さ」という従来どおりの説明行いました。
これに対して仕分け人からは「医師の指示やケアマネジャーの依頼がないと訪問看護サービスが供給されないため1人開業をすることによって劣悪なサービスが提供されることはない」「安全性は 医師やほかの事業所との連携で確保できるのではないか」という至極まっとうな意見が出されました。
最終的には「1人でも訪問看護ステーションを開きたいという意欲のある看護師は多いのに 一律に認めない正当な理由は見あたらない」という意見に集約された形になりました。
これまで利用者のために活動を行ってきた看護師たちの主張が公の場で認められたことは たいへん大きな意味があります。
これを契機に 無意味な規制が撤廃され 国民の利益に資する医療や介護が提供される第一歩となることを期待しています。
また「『一定の要件』が過大なものとなって 実質的に規制が続く」ということがないように よりよいサービス実現のための歩みを これからも緩めないでもらいたいと願っています。